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雪に咲く花

第40章 消えない繋がり

『熱いよぉっ!……お願いだからもうやめてぇっ!……』
頭に響く悲痛な叫びは、どこかで聞いたような気がする。
「なんだ!?……いったいこれは?……誰が叫んでいるんだ!?」
考える間もなく、悲鳴は大きくなっていく。
『いやあぁっ!……熱いよおぉっ!……誰か助けてぇぇ!』
叫び声の主の顔が頭の中にはっきりと現れ、亘は思わず叫んでいた。
「雪斗っ!大丈夫か!?今助けてやるからな!」
誰もいないはずのところに手を伸ばした瞬間、正気に戻る。
「えっ!?……」
ふと謎に感じると同時に、亘の空白だった記憶の断片が脳裏に浮かび上がってきたのだ。
雪の中で浴衣姿でぶつかってきた雪斗、
恐怖に怯えている雪斗、
ベッドで重ねた肌、
イルミネーションの中で降りだした雪、
フィルムを巻き戻すように思い出が蘇ってくる。
「いったい俺はどうしていたんだ!?雪斗!いるのか!?返事をしてくれ!」
空白の扉の中に眠っていた記憶は、徐々に形になっていく。
「そうだったんだ!俺は雪斗と……」
雪斗と会う約束をしたあの日に、車に跳ねられてから雪斗の存在は遠くなっていたのだ。
亘は蝋燭の灯りで電話を探すと、雪斗の番号を押していた。

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