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雪に咲く花

第40章 消えない繋がり

雪斗は、入浴剤を濃いめに注いだ湯船にゆっくりと浸かっていた。
裸体が見えてしまう透明の湯のままでは、残酷に身体を弄ばれた事を思い出してしまう。
自分の身体を隠せる緑色の湯は、安心して浸かれるのだ。
「ああ、あったまるなぁ……こんな寒い日は気持ちいいや」
そんな快感もつかの間、湯船から出て身体を洗おうとしたとき、自分の裸体が目に入ってしまった。
同時に、忌まわしい過去の出来事が頭の中に浮かび上がってくる。
また、性的暴行を受けたこの身体を、亘から拒絶されたことが思い出されてしまい、首を振って頭から追い出そうとする。
『男に抱かれた汚れた君とは仲良く出来ない』
何故か今日に限って亘の言葉が、はっきりと、しつこく耳に響き続けるのだ。
「もうやめてくれよ!……」
身体ががたがたと震えだし、涙が溢れてくる。
「汚ないんだ……俺の体……」
何度もボディソ―プをたっぷりつけて洗い流しても、心の傷は流れてくれない。
苦しい過去にとりつかれ息が苦しくなる。
「……くるしいよ……助けて……もう死にたい」
また過呼吸が始まってしまったのだ。
しかし、もう亘の手で救われることはない。
涙で視界が曇っていき、苦しさの中で意識がだんだんと遠退いていった。

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