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雪に咲く花

第47章 うるう年のサプライズ

去年も2月の末に、亘と雪斗は墓参りに来ていたのだ。
帰り際に、墓地の入口で、手足が動く熊のマスコットが落ちているのを拾った。
多少色褪せてはいたが、誠心誠意こめられた手作りのように感じる。
墓地には人の気配がなかったので、おそらく帰ったのであろう。
たかが子供の玩具といえども、大切な宝物なのかも知れない。
幸い、墓地から出た通りに、警察学校を出た颯人が勤務する交番がある。
とにかく、そこに預けることにしたのだ。

「取り敢えず、この書類に名前と住所書いてくれよ。一応はルールだしな」
「たかが、玩具くらいで大袈裟だよ。面倒くさいな」
颯人が差し出した書類に雪斗が呟く。
「そういうなって。半年たって落とし主が現れなかったら自分のものになるんだぞ」
「こんなもの貰ったって嬉しくないよ。どうせなら財布だったら良かったのに」
「こらっ!卑しいこというんじゃない」
口を尖らせる雪斗に亘が叱った。
「すみません。ここに落とし物届いてませんか?熊の形のリボンのついたやつなんですが……」
更なる幸いなことに、偶然落とし主が現れたのだ。

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