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ながれぼし

第1章 きみのそばで



智くんって、実はかなり頭のキレる奴なんかな。普段はぼーっとしてるふりして、計算高いとか?


いや…

ないな。

ないない。

もしそうだとしたら、もっと上手く立ち回るよな。
そう、智くんは俺やタケと居る時以外は、独りで居る。独りで居ることに抵抗も無いが、それを本人が望んでいるようにも思えなかった。


大「……ごめん…。」
俺が何も言わないことに、検討違いだと思ったんだろう。
途端、その優しかった顔に影を落とす。

「…ないよ。」

大「…え?」

「違わないよ。智くんの言う通りだよ。」


そう。

俺は、俺の両親を尊敬している。


産まれる前から決まってた俺の人生。

その前から、決まっていた親父、お袋の人生。

レールを敷かれた人生。

その辛さを知っているからこそ

俺には、少しでも自由に生きてほしいと、許される限りの我儘を言わせてくれた。

この大学生活もそうだ。

挙げ句の果てには、就職先だって望むところが有るならば、俺の望むようにしてやりたい。と。

そんな…優しすぎる両親だからこそ…

俺は、この人生に抗えなくなった。

俺が我儘を言えば言うほど、両親が周りからどう言われるか、それが分からないほどもう子供じゃない。

「もう、決めてはいるんだよ。
俺は、この人生を受け入れて生きていこうって。

でも…時々、突然さ、なんでだよって。俺の人生なのにって。思っちゃうことがあってさ。
堂々巡りっつーの?

たまたま今日、そんな気持ちになっちゃって。
関係無い智くんに当たりそうになった。ごめん。」
そう、ただの八つ当たりだ。


大「…」



なんの反応もない。
どうした?と顔を見れば、その顔は、今にも

泣き…そう?

「え?!…な!泣くなよ!
俺が悪かったって!八つ当たりしてごめんな?」

今にも、崩れ落ちそうな涙。

つか、泣くことか?!


大「違う…」

「え?」

大「違う。」


な…何が?

とうとうこぼれ落ちた涙。


焦る気持ちとは裏腹に、この時、俺は初めて智くんの事を綺麗だな。と思ってしまった。

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