テキストサイズ

ながれぼし

第7章 スパークリング

*相葉*




「相葉く〜ん♪もう一件行こ!もう一件!♪」


時刻はもうすぐ午前様。


「ぇ…ぁ…行きたいのは山々なんですけど、明日朝が早くて。」


口をついて出たのはそんな微妙な言い訳。


「えぇ〜!」

「ごめんなさい!」

肩を竦めて両手を合わせれば

「もぉ〜しょうがないなぁ。今度は朝まで付き合ってよ?」

残念そうに がくっ。と肩を落としてくれるのは、もう何年も同じ番組で共演させて貰っているタレントさん。

申し訳ないとは思いつつも…

「ふふ。勿論です。せっかく誘って頂いたのにすいません。次は朝まで呑みましょう。」


「そう?ホントに?また誘っちゃうよ?」


「はい。ホントにまた誘ってくださいね?」

そんなお約束の口約束。


すっかりでき上がっている彼をタクシーに乗せれば、嬉しそうに帰っていく。


「ふぅ………って!やばっ!」


そして俺は息つく暇なく、少しだけ灯りの少なくなった夜道を走り出す。


「はぁ……はぁ……」


『明日朝が早くて。』

なんてのは嘘っぱち。


「はぁ…はぁ…」


そりゃ仕事は有り難いことに入ってるけど、昼からだし。



じゃぁなんでかって?


今日はね。居る気がするんだ。


「っはぁ…!」


止まることなく走り抜け
マンションのエントランスを流れるように抜ける。


…あぁしくった。もう少し酒セーブしとけばよかったかな。
でも、せっかく誘って貰って呑まないのも失礼だし。

少しだけくらくらする頭を、エレベーターの浮遊感と振動が更にぐらつかせる。


てか、なんでこんなに急いでんだろう俺…
居ないかもしんないのに。


頭ではそんな事を思いながらも、
目は、エレベーター内のディスプレイを、早く目的の階へ行け。とばかりに急かすように見詰めてしまう。


ポン。

と、軽やかな音と共にエレベーターから抜け出して、走りつつリュックから鍵を取り出す。


そして「ふぅ…」と1度呼吸を整えてから、俺は鍵穴へ鍵を差し込んだ。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ