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ながれぼし

第8章 in the water




「…大事な話?」

あーだこーだ言ってたのは聞いてたけど

跳ねたり、モヤモヤしたり
おかしな俺の心臓。

だから会話の内容は全然聞いてなかったや。


松岡「そうだ。」

いつの間にかに真面目顔の松岡さん
の、隣にいる大野くんを見れば

少しだけその口元を緩め
でも、その表情からは気持ちは読み取れなくて…



松岡「智。水泳やってないって本当か?」



……え?

その質問は、俺に…とも、大野くんに、とも取れる言い方で
けど、視線は俺の方に向けられていたから


「水泳……部には所属してないです。」

そう言う言い方をされたら、そう返すしかなくて

だって、もしかしたら俺が知らないところで実は水泳をやっているかもしれない……なんて考えちゃって


松岡「…そうか。」

コツ。と拳を自分の額に当てて、大野くんへと視線を落とした。

大「松兄…」


松岡「俺のせいだよな。」


大「違う。」


松岡「違わないだろ。」


大「違うよっ」

松岡「何年、俺がお前の近くに居たと思ってんだよ。お前の両親の次位には、お前のことわかってるつもりだ。」


大「…」


松岡「けど、兄貴と義姉(あね)が亡くなって、一人になったお前を、守ってやらなきゃ、俺がなんとかしなきゃって焦ってた。」


大「…松に…」


松岡「不自由はさせたくない。兄貴達が生きていた時の様に、少しでもそれに近づけるようにって…」


大「、」


松岡「智が、どう思ってるかなんて…いや、最近は普通の会話すらまともにする時間作ってやれなかった。」

松岡「気が付いてやれなくて、悪かった。」

そう。松岡さんは続けて


ふわ。と
詫びるように、でも、それはとても優しく

ゴツゴツと、傷や豆だらけの大きな手が

夕暮れを知らせる風に揺れる大野くんの髪を
ゆっくりと撫でた。



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