テキストサイズ

ながれぼし

第2章 over the 妄想



大「あ、続きはね。」
パッと顔を上げて俺を見る。その瞳は至極楽しそうだ。

「や、もう十分…」


大「最後にはね。翔くんが帰ってきてくれるんだよ。そして「やっぱり智くんが居ないと無理」って言って、ぎゅぅって抱き締めてくれるんだ。

ねぇ最高のハッピーエンドだと思わない?」

そう言ってその綺麗な顔を崩して、とても嬉しそうに笑う。



…ハッピーエンド。ねぇ。


大「うん!涙活おわり!
翔くん、手洗いうがいしてきなよ。
あと卵焼けばオムライスの完成だよ。」

何事も無かったようにすくっと立ち上がる智くん。


オムライスか。それは楽しみだ。
俺の知る限り、智くんが料理を失敗したことはない。

そして俺はすごく腹が減っている。


でも


コキコキと首を鳴らしキッチンへ向かおうとする智くんの腕を掴んだのは俺。


大「わっ、なに?」

そのままその華奢な体を引き寄せた。


大「…あっぶな…!
もぉ!危ないじゃん。なに?」
怪訝そうに俺を見る瞳は目の前。


「ねぇ、その続き、教えてあげようか。」


大「続き?なんの?」
はて?と本気でわかってない智くん。


智くんに涙活ブームが訪れ、早約3ヶ月。
感動映画を見ても、感動の再現ドラマを見ても、感動はしても泣けない智くんが行き着いたのが、俺。
脳内で俺と喧嘩したり別れたり。これが一番泣ける。らしい。
俺のことすきだからこそなのだろうが、気持ちは複雑だ。


そして、智くんの思考は小学生で止まっているのか、決まってバグしてハッピーエンド。
智くんの妄想はいつもそこで終わる。


「ハッピーエンドの後…どうなると思う?」


大「…あと?」


さ、貴方の妄想を越えていこうぜ?


「2人は、仲直りのキスをして、朝が来るまでsexをするんだ。」


大「は?なに言っ…んっ」

不満そうな口に、少しだけ強引にキスを落とす。

隙間から舌を絡ませれば、最初こそ納得してなさそうだった唇からは、熱い吐息が漏れはじめる。

途中で止めるのは不本意だが、ここじゃな。と思い、ゆっくりと唇を離し
「智くん。ベッド行こっか」


大「はぁ……翔くんてさ」
すでにピンク色に染まる頬。

「ん?」



大「変わってるよね。」
なんて言って濡れた唇を綺麗に上げた。



……


貴方にだけは言われたくない。



*おわり*

ストーリーメニュー

TOPTOPへ