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ながれぼし

第2章 over the 妄想



もう、その瞳には涙はない。

大「翔くんに食べて欲しくてさ、頑張って夕ご飯作ったんだ。
でも、ちょっと目を離しちゃったら失敗しちゃって。作り直そうとしたけど食材がもう無くて。」


「うん。」


大「まだ翔くん帰ってこないと思ったからさ、買いにいこうとしたんだよ。食材を。」


「…うん。」


大「そしたら、今日に限って翔くんが早く帰ってきちゃって、だから俺、正直に謝ったの。
でも、翔くん凄い嫌な顔して「なにそれ?最悪」って。ご飯ができてないこと怒っちゃって。」


「…」


大「俺、何度も謝ったんだよ?だけど許してくれなくて、最後には「出てく」って。
俺、翔くんが居なくなるなんて嫌だったから、頑張って引き止めたんだよ。でも俺の力じゃ全然敵わなくて。」


「…あぁ」


大「結局出て行っちゃって「お前なんか嫌いだ!」って捨て台詞まで。」


「…そう」


大「もぉ捨て台詞も、出て行っちゃったのもショックで。
そしたらね、飾ってあった写真が目に入ってさ。」


長い…


大「この時は仲良かったなぁって。そんな風に思っちゃって。そしたらだんだん悲しくなってきてね。」


「で、泣いたと。」


大「そ。そしたら本物の翔くんが帰ってきちゃうんだもんなぁ。
もうちょっと浸ってたかったー。」

さっきのぐずぐずは、どこへ行ったのか。のほほーーんと、万歳をしてソファの座面に寄りかかる。


…邪魔か?

本物の俺は邪魔か?


大「あーーでもスッキリしたぁー」
その体勢のまま、のびのびと反り返る。


…もう、おわかりだろう。

そう、泣いてた原因は智くんの想像…いやもはや妄想。

そもそも俺、料理が失敗したくらいで「最悪」とか言う鬼畜じゃないし。
智くんの事は寧ろすごく大切にしている。つもりだ。

だから、
大切なことなので、もう1度言う。

これは全部、智くんの妄想だ。

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