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ながれぼし

第1章 きみのそばで



宮「で、カツカレー食べられなかったんだ?」
相変わらずケタケタと笑うタケ。

「……。」

結局俺が食べたのは、しょうが焼き定食。
や、別にしょうが焼きに罪はないよ。寧ろ良く食べるし。美味いし。

でも!

でも俺は!昨日はカツカレーの腹だったんだ。
目の前にして取り逃がすなんて!
思い出しただけでも悔しい!

ので、この行き場の無い悔しさをタケに聞いてもらっている所だ。


宮「因みに因縁の相手は、大野でしょ?」

「え?大野?…なんでわかんの?」

宮「ボク、情報通なんで♪
それに大野って有名じゃん。」

「怖ぁ…てか有名?なんで?」

宮「櫻井って本当、自分に関係あることしか興味ないのな。大野の顔見てねーの?そこら辺の女より綺麗じゃん。小柄だし。」

綺麗…?

う~ん。と昨日の記憶を手繰り寄せる。
カツカレーがショック過ぎて、曖昧だが…

「…綺麗っつーか、格好いいんじゃね?
てか男に綺麗ってなんだよ。そんなこと言われたくないね。俺なら。」

宮「そう?入学してすぐ噂になったくらいだよ?俺、話しかけちゃったし。」

「お前ってそっちだっけ?」

宮「はは!ただの興味。」

…ただの興味で話しかけられてもなぁ

宮「無口で何考えてるかわからん奴だったなぁ。俺みたいの苦手的な?で、それ以来ノータッチ。」
またケタケタと思い出したように笑う。



タケのすごいところは、誰にでも物怖じしないとこだ。

でもなぁ

「なぁタケ。
興味で人に近付くのは、きっかけとして良いと思うけどさぁ、第一印象で決めつけるのは良くねーと俺は思うけどな。」

なんで、こんなことを言ったのか。

ただ…噂になるほどの大野と言う男は、そんな風に他の奴からも声をかけられたり、噂が独り歩きしてんじゃねーかなって。

…それ、すげーやだな。


宮「お、おい…櫻井…」

「ん?」
タケの少し焦った声に、顔をあげ
タケの少し上げた視線の先を辿る


大「櫻井。くん?」

そこに居たのは、昨日の男。

「そうだけど…」

大「これ。」

「?」

これ。と言って見せられたのは、俺の学生証。

「うえ?!なんで?!」

大「荷物と一緒に落としたんじゃない?」


荷物?

あ!あのときか!

そう、カツカレーを寸前で取られた俺は、衝撃の余り、声と共に荷物を床に落としてぶちまけたのだ。

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