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ながれぼし

第5章 愛ってやつ?





大「ありがとう。」


こく。とココアを飲んだ智。


「少しは落ち着いた?」


泣きすぎて、掠れた声に腫れぼったい瞳。


大「うん…。」


「そ。なら良かった。
じゃぁ歯ぁ磨いて寝よ。明日も午前から講義なんすよ俺達。」

俺と智は同じ大学の同じ学部。
取ってる講義もほぼ同じ。

たまたまね。たまたま。マジで。


「ふぁぁ〜…、智ベッド使っていいよ。俺、床で寝れるから。」


その腰じゃ流石に辛いでしょ。


大「え?一緒に寝ようよ。」


「は?無理だよ。シングルよ?狭い狭い。」



.



「…余裕だな。」


大「だね。俺達中学から体型ほぼ変わってないもんね。」


シングルベッドに余裕で収まった2つの身体。


……複雑だ。


「電気消すよ。」


大「うん。おやすみ。」


パチ…と音と共に暗くなった部屋。


もぞもぞ。と俺の方を向いた智の気配。





……


「なぁ智。」


大「…ん〜…」


もう寝そう。


「智は、いい男だよ。相手が見る目がないんだよ。だからさ………」


だから?


大「にの。」


「…ん」


大「ありがとう。」


「ぁ…おう。」


大「ふふ。おやすみ。」


「…おやすみ。」


すぅすぅ。

直ぐに、聞こえてきた気持ち良さそうな寝息。

いつもはひんやりと冷たい布団が、今日はぽかぽかと暖かい。



そして俺、二宮和也。
可愛らしい童顔。美人な智と並ぶには超お似合い。料理、洗濯、掃除は得意分野。今は貧乏学生だけど、正社員にだってなってやる。
そして頭はそれなりに良いし、空気も読め、変な性癖もない。

なにより、幼なじみの智のことはなんだって知ってる。



俺だったら…

俺だったら、智を泣かせたりしない。
程よく甘えさせて、程よく俺も甘えて
今以上に、優しく大切にする。


ねぇ智。


俺には智だけなんだよ。


だから…

「いい加減俺を好きになってよ。」


暗闇に慣れた視界。

思わず触れそうになった智の頬。


ぎゅぅ。とその手を握り締める。


俺は、そっと智の方へ身体を向け
ゆっくりと目を閉じた。




夢か


幻か


それともただの願望か



瞼を閉じる瞬間



智が幸せそうに微笑んだ



そんな気がした






*おわり*

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