テキストサイズ

ながれぼし

第6章 きみごころ

*宮崎 健(タケル)*




たまにはさ、昔話もいいんじゃない?


****




夏の終わり

この時期はなんだか少しだけ寂しくなる。

少しだけ開いた窓。その隙間から入ってくる頬を撫でる風が、髪の毛を揺らす風が心地良くはなるけれど
やっぱりなんだか寂しい。


な〜つがすぅぎ〜…♪

あの有名な歌が頭の中をくるくる。



お。

「ねぇ櫻ちゃん。」


櫻「んー?…は?サクラちゃん??」


「大野っちがモテてる。」
コンコン。と窓ガラスをつついて教えてあげる。

櫻「え?どこ?」
櫻井 間違った。櫻ちゃんは、俺が見下ろしていた窓から中庭を覗き込んだ。


櫻「…なにあれ……先輩?」


「3年だね。あの顔。」
横顔から察するにだけど。

櫻「……3年…」

俺が櫻井の呼び名を櫻ちゃんに変えたことなんて、もうすっかりどうでも良い様だ。


少し上にある顔をチラッと見れば……その顔は…


「サークルの勧誘か、それかデートのお誘いかなぁ。」


櫻「は?デートって………大丈夫かな智くん。」


やっぱり心配か。
親心?違うか、この場合友達心っていうのかな。



中庭には、頭1つ背のデカイ男に壁ドンならぬ、木にドン。されちゃってる小柄な大野っち。

ちょっと遠くて見えにくいけど、大野っちの顔は…眉毛が下がって困り顔。


「困ってそうだね。大野っち。」
櫻ちゃんに、敢えて伝えてみれば

櫻「…ったく…」

櫻ちゃんは1度机に戻って、パタン。とテキストとノートを同時に閉めた。
眉間には皺が寄っていて、バックから携帯を取り出したと思えば、ぽちぽち。して耳に当てた。



暫くして「あ、もしもし?」と話し出し、俺はそれを確認してから中庭に視線を下ろす。

そこには、スルッと先輩の腕から抜け出していく大野っちが見えた。その耳にはしっかり携帯。


…あーもぉ
最近の櫻ちゃんは、面白いったらありゃしない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ