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ながれぼし

第6章 きみごころ




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「大野く〜ん♪こっちこっちこっちぃ!」

とでも言っているような口と手の動き。
語尾にハートマークすらついてそうな、にやついた表情の"あの先輩"

うっれしそぉ。念願の2人飲みだもんね。
に、してもあの笑顔。そーいう奴だって思って見るからか、なんかキモいな。


櫻「……」

たぶん。横にいる櫻ちゃんも、口にしないだけで同じ様な事を思ったんだろうな。稀に見ない冷たい視線。


んで、その先輩の元へ、いつも通り背中を丸めて近づいて行く大野っち。
そしてそんな大野っちを俺と櫻ちゃんは、少し離れた所にある電光看板に隠れながら見ている。


今日は、11月某日。
大野っちが先輩と飲む日になりましたとさ。



.

櫻『俺に考えがある。』

俺はてっきり、櫻ちゃんは先輩と大野っちの飲みに参戦するんだろうなと思ってたんだけど…


「いらっしゃいませー。」

「予約した宮崎(タケの名字)っす。」

「2名様ですね。お待ちしておりました。ご案内します。」

ウキウキなオーラを纏った先輩と、普段通りの大野っちを追って俺達が入ったのは、中々洒落た飲み屋。少人数しか客が店内に入れない、個人経営のちょっとした古民家の様な店だ。

店員に案内されたのは個室。
そこに入る前に見えた隣の個室の扉は既にピッタリと閉じていた。



櫻『タケ。雰囲気はそれなりに悪くなくて、個室が2部屋以上あって、尚且つ静かな飲み屋って近くにないか?』

俺に、そんな要望を言ってきたのは櫻ちゃん。

ま、だてに?多いときは週8で飲んでた俺。その要望に速リターンでこの店をピックアップ。
店が決まればと、個室2部屋隣り合わせで予約を入れちゃって、後は大野っちがあの先輩に「行ってみたいお店があるんですぅ♪勿論個室ですぅ♪♪」とでも言ってもらえば良い。



そ。櫻ちゃんの"俺とタケも行く"っつーのは、大野っち達と一緒に飲むんじゃなくて"2人の後について行く"の行くだった。

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