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ながれぼし

第6章 きみごころ



「じゃぁ取り敢えず…」

この店に来た目的故に、のんびり。と飲んだり食べたりしている場合ではないんだろうけど、だからって何も注文しないのはマナー違反。
取り敢えずの「ウーロン茶を2つと、あとはぁ…」

…そういや貝が好きだとか言ってたっけ櫻ちゃん。
「この貝のダシが入ってる方の卵焼きとー、焼いた枝豆。お願いします。」
おしぼりを持ってきた店員へ伝えた。



一方、そんな俺の店への繊細な気遣いには微塵も心有らずな櫻ちゃん。はと言うと
店員が部屋を出ていくと同時に、古民家ならではの昔ながらの薄い壁へと耳を近づけた。


「櫻ちゃん。聴こえる?」(←小声)


櫻「…あぁバッチリ。」


「……なぁちょっと、楽しんでない?」


櫻「え?そう見える?」


「口。笑っちゃってんじゃん。」

櫻ちゃんの顔からは、さっきの緊張感…不機嫌感は無く、だいぶ口元が緩んでいる。


櫻「タケ。」
お前も聴いてみぃ?と
クイクイッ。と楽しそうに親指で壁を指した。



えー…俺も聴くのぉ?
と、乗り気ではない風を装いつつ、若干ワクワクしちゃうのは仕方ないよね。

だって大野っちは……



先輩「なんで?!なんで飲まないの?!」

大「だから、俺未成年なんで。」

先輩「いいじゃん!今日くらい!」

大「嫌です。」

先輩「嫌って!今月誕生日でしょ?!もう良くない?!」

大「駄目です。」




……

「ぶふっ!」


櫻「ちょぉ!タケ!吹き出すなよ!バレんだろ!」


「いやいや!櫻ちゃん声でかいから!」


櫻「し、し、しぃ〜〜ー!」
と、櫻ちゃんは人差し指を唇に当てた。



でも…


先輩「ねぇちょっとだけ!ちょぉーとだけ!付き合ってよ?」

大「無理です。」

先輩「いや俺、先輩よ?」

大「関係ないです。」

先輩「はぁ?なんでそんな頑固なの?!」

大「頑固とかそういう事じゃない。育てて貰った親に失礼だからだよ。」

先輩「は?はぁ〜〜…?」





宮・櫻「「ぶはっ!!」」


「ぶっ…ぐくくくく…」
笑いが吹き出した口を慌てて両手で押さえる。

櫻「ぶふっ…ぁ腹…腹痛い……ふつーにタメ口…ぶぶっ…」


大野っちは、頑固。先輩当たってるよ。
これは俺も久々、腹痛ぇわ(笑)

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