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ながれぼし

第1章 きみのそばで



大「どうぞ。」

目の前にコトリ。と置かれたマグカップ。
どうも。と湯気越しに見た智くんの表情は、優しい。




あのあと

連れてこられたのは智くんの家。

てか実家。智くんは実家から通ってたんだって初めて知った。

こんな時間に、ましてや両親がいる家に上がるのは気が引けたが…
ふわん。と流れるように連れられ、なんの反論もできず、現在進行形で智くんの部屋でくつろぐ俺。

上がり込む時に、挨拶をした智くんの両親は、智くんと同じく、ふわり。と優しく笑う。
智くんの両親っぽいな。と思ったが、智くんの顔はどっちにも似てない。とも思った。


「…」

智くんから、別に何か聞かれる訳でも、話をするわけでもなくて、静かに緑茶を飲む2人。


先に耐えきれなくなったのは、俺。

「あのさ、」

大「ん?」

「なんも聞かねーの?」

大「え?うん。」
うん。に合わせて首を傾げる。

なにそれ。じゃぁなんで俺、ここにいんだ?
智くんは、そんな俺の気持ちを見透かしたように微笑んで

大「翔くんが、話したいなって思ったら話して。」

…なんだそりゃ

「ずりーぞ。」

大「なんで?」

「だったら家に連れてくんなよ。」
聞くまで帰す気無い雰囲気出しといて

大「そっか。確かにー。」

「確かにー。じゃないよ。ったく。」

大「あ、泊まってく?」

「どんだけ長話させる気だよ!」

大「じゃぁ、カツカレー食べに行こ。」

「なんでそうなった?!」

大「せっかく翔くんに会えたから。」

「大学でいつも会ってんだろ!」

大「あーだからか。休みの日、翔くんに会えないと変な感じがするのは。」
えへへ。と笑う。

「っ…」

なんだそれ…

そんなふざけたことを話す智くんだが、その顔はずっと優しいまま。


なんだよこの空気。


いつの間にか、さっきのどす黒い感情は消え失せてて…


すっかり智くんのペース。


なんか…


負けた気がする。

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