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and you

第2章 not yet  S×O





O side



困惑してる翔くんの顔を見て、
すぐに察した。

翔くんは昨日のことを何も覚えてないって。


昨日、明日は俺は休みだし翔くんも遅いから
家でゆっくりしようねって言ったじゃん。

…俺のものってシルシだって、
俺にもキスマークをつけたじゃん。


「好きだよ…」って。

聞いたことないくらい、甘い声で
囁いたじゃん。


「帰るんだね…。」


昨日のことを何もかも忘れて。

甘い期待をしてた俺がバカだったんだ。

お酒の力を借りて、甘い雰囲気を
楽しんでた俺がバカだったんだ。

堪えきれなくなった涙が
頬を伝っていくけど、拭う気力もなかった。



「…覚えてない?昨日のこと。」


翔くんの顔を直接見ることは出来なくて、
俯いたまま問いかける。

嫌な間があいて、たった一言

「…ごめん。」

これだけが返ってきた。


これ以上、何も覚えてない今の翔くんと
一緒に居るのは耐えられない。

ぐいっと涙を拭って、翔くんを見つめて

「そっか…。

 もー、翔くん飲みすぎだよ。
 いい大人なんだから、もっと賢い
 飲み方しないと。ね?」


無理矢理張り付けた笑顔だって、
バレていると思う。

でも、もうどうしてもこの空気には
耐えきれなくて、話を素早く切り上げると
翔くんを玄関の方にぐいぐいと押す。


「俺も飲みすぎて具合悪いから。
 
 じゃ、また今度の仕事でね。」
「具合悪いなら、俺がめんどー「大丈夫。」


心配する翔くんを無理矢理外に追い出して、
ガチャンと鍵を閉めた。

昨日の翔くんとの幸せな記憶にも
鍵をかけてしまうように。


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