
and you
第2章 not yet S×O
S side
何度見たって、跡はそこにあって。
手でこすってみても消えるものではない。
「…なんで?」
この部屋には、智くんと俺だけ。
自分で付けられる位置ではないし、
第一自分で付けるもんじゃない。
智くんがつけたの?これ。
…智くんは、俺が智くんを好きだって知ってる。
何でこんなことしたの?
本当に智くんがしたの?
いくら智くんの寝顔に問いかけたって
返事が返ってくるはずもなく。
とにかく気持ちを落ち着かせたいけど、
体が火照っているようで熱い。
これ以上、この部屋でいると
もっと熱くなりそうで、荷物を持って
そーっとリビングのドアの方へ歩き出した。
「…帰るの?翔くん。」
思わず体がビクッと跳ね上がった。
後ろをバッと振り替えると、
ゆっくりと体を起こして、ゆらゆらと
揺れる瞳で俺を見る智くん。
何で。
さっき缶を落とした時には、
目を開けることもなかったのに…。
ゆっくりと、一筋の涙が溢れた。
「…帰るの?」
驚いて何も言えない俺に、
智くんは重ねて質問をした。
