and you
第3章 初恋はみつのあじ M×N
N side
突然飛び出てきた俺に、目を点にして
驚いてる潤くんの姿がぼやけて見える。
…久しぶりに見た、潤くんの顔。
こうやって顔を合わせることなんて
暫くなかったから、体は固まって動かないし、
何故かじわじわ目頭が熱くなる。
自分でも、目の縁ぎりぎりまで
涙が溜まっていることは分かる。
それにすぐ気がついた潤くんは、
「え、え、和さん!?
あ…とりあえずあっちに行こう。」
知らぬ間に囲むように集まってきてた
人たちを、すり抜けるように俺の手を引く。
久しぶりに感じる潤くんの温度に、
込み上げるものを我慢できなくて
鼻をすんっとすすった。
着いた先は、廊下の突き当たりの階段を
おりた踊り場のようなスペース。
「ここなら人来ないと思うから。
…何で泣いてるの?」
覗きこむ瞳は優しくて、温かい。
「…何でもない。
それより、どうしたの?」
無理矢理話題を変えると、納得していない
様子だけど、本題を思い出したのか
潤くんが口を開いた。
「今日、一緒に帰ろうっていいに来た。
…で、そのあとさ。」
「そのあと?」
続きを促すと、口をもぞもぞさせながら
俺の様子を伺っている。
「…その、
…俺の家に来ない、ですか?」
いつもの自信たっぷりな雰囲気はどこへやら、
照れ臭そうに、それでも真剣な瞳で
俺を真っ直ぐに見る潤くん。
それが何だか凄く可愛くて、
内容もろくに頭に入っていないままに
こくんと頷いた。
そのことに気が付いたのは、
昼休み明け、5限がはじまって10分後だった。