テキストサイズ

and you

第2章 not yet  S×O





S side




家は飛び出したものの、智くん家への
正確な道は分からない。

前に智くんの家に行ったときは、智くんが
一緒だったし、帰りも大通りからタクシーに
乗ったけど、どうやって帰路についたのか
はっきりとは覚えてない。

追い出されたことを頭で理解出来ないまま、
トボトボと歩いてたからだと思う。



「智くんに電話、しようかな…。」


智くんは電話に出てくれるだろうか。

…きっと、出てくれはしないだろう。

ただのメンバーに成り下がっていたとしても、
他のメンバーとは置かれている状況が違う。

それでも藁にもすがる思いで、
震える手で智くんに電話をかける。


5コール、6コールと回数を重ねても
出る気配は一向にない。

今日の智くんのスケジュール的に、
仕事は終わってるはずなんだ。


これ以上この場で何かを考えていても
状況は変わらない。

とにかく大きな通りへでて、
タクシーを捕まえて記憶を頼りに場所を伝える。


頭で考えるより先に、体が動く。
体が動くより先に、心が動く。

こんなことは初めてだった。

頭で考えてからじゃないと動けない臆病者の
いつもの俺なら絶対にしない。


でも、ここで動けば、
まだ間に合う気がしたんだ。

俺の願望から来るものかもしれないけど、
上手くいく気がしていた。




タクシーが静かに止まった。
何となく、あの日見たような光景が広がる。

行けるような気がして、脚も自然と速くなる。


「あ!あった、ここだ。
 智くんのマンションー…


 え…?」



エントランスの中。

誰かと腕を組ながら、甘えるように
寄り添いながら入っていく姿。


「智くんと、…ニノ?」


いつもの楽屋のじゃれあいじゃない。


ふたりはまるで恋人同士だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ