テキストサイズ

and you

第3章 初恋はみつのあじ M×N





M side



和さんのことも心配だけど、
正直俺にも悩みがある。

それもかなり重大な悩みだ。


その…和さんと俺は、まだ、だから。


まだ、というか、とことん清い関係。

手は握っても、ハグはない。
キスももちろんしたことがない。
体を合わせるなんてなおさらだ。



付き合い始めて五ヶ月。
チャンスが全くなかった訳ではない。

お互いの家に行ったときや、
デートをしたあとの帰り際に何となく
そんな雰囲気になったことは何度かある。

でもいつも上手く交わされてしまう。

はじめは偶然だと思っていたけど、
でもこうも何度も続くと不安になって、
俺から仕掛けることも出来なくなった。


最後に手を繋いだのもいつだったか…。

いつかはって思って耐えていたけど、
最近は我慢するのが辛くなってきてしまって。





「嫌われて…はいないよなぁ。」


和さんを家に送って別れたあと、
ひとり家に帰って部屋で寝転んで考える。

今日俺を心配してくれてた真剣な顔も、
そのあとの優しい笑顔も。
俺に向けられた表情が嘘だとは思えない。



「まだ早いってことなのかな。
 いや、でも五ヶ月もたってたら…。

 …はぁ。」


ため息が静かな部屋に吸い込まれていく。


ひとりでこうやってうだうだ悩むのは
柄じゃないとも思う。

でも和さんのことに関しては
本当に余裕がなくて。


それなりに恋愛もしてきた、と思う。
ルックスが幸いして相手に困ったこともないし。

でも、こんなに好きになったのは初めてだ。
そういう意味で俺の初恋は現在進行形な訳で。


「…はぁ。」


悩みが尽きないのは、初恋だからだろうか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ