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and you

第3章 初恋はみつのあじ M×N






N side



昼休みを告げるチャイムが鳴って、
教室が騒がしくなる。

ガヤガヤと人の波が教室の外へと
流れていくのに流されて、
雅紀と一緒に食堂へ向かおうとすると


「…ん?」
「何か騒がしくない?」


廊下から女子たちの黄色い歓声。

ぱっと外を覗いてみると、

「潤くんたちだ…。」


颯爽と歩いてくるのは、
ずっと会いたかった潤くんと、
いつも一緒にいる男の子。


「櫻井くんもいるね。」
「あ、そんな名前だったわ。
 すっげぇ歓声。」
「そりゃ、この学校の王子様ふたりが
 並んで歩いてりゃそうなるよ。」


雅紀が俺の手をぐいっと引っ張ると、


「ほら、今チャンスなんじゃない?
 一緒に帰ろって誘っておいでよ。」
「ばっか、こんなとこで言えるわけないだろ!」


引いてダメならと、今度は俺の体を
グイグイ前に押し出す雅紀。

こんの馬鹿力…!


「痛ぇんだよ!」
「にのちゃんが前に進まないからじゃん!」
「行きたくねぇの!」
「あっ、またデビルにのちゃんになってる。」


しまった!聞こえちゃうじゃん!

慌てて口を押さえる。

その力が分散された一瞬をついて、
雅紀が俺をえいっと押し出した。


「わっ!」
「ぅおっ、って、和さん!?」
「あ…。

 ひ、久しぶり…。」


バランスの崩れた俺を抱き止めてくれた
潤くんとばっちり目が合う。

この感覚すらも久しぶりで、
何だか泣きそうになる自分に笑えた。


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