
and you
第2章 not yet S×O
S side
俺は知っている。
智くんが俺が智くんを好きだって
気がついているってことを。
でもまだ。
まだ智くんの気持ちははっきりと分からなくて。
確信を掴めなくて、
このふわふわした関係を続けている。
そんなある日。
5人の仕事で、楽屋には智くんと二人。
じーっとこっちを見ている智くんの
目を避けるように新聞に逃げた。
しばらくして、コーヒーを口に含んだとき
「翔くんってさ、彼女いないの?」
いきなりこんな質問をぶっこんできた。
思わず飲んでたコーヒーを吹き出しそうに
なって、慌てて口を押さえる。
「ごほっごほ。」
「翔くん大丈夫?」
「ん、もう大丈夫だよ。
智くんが急にそんなこと聞くから
驚いちゃったよ。」
そうだよ。
今まで、こんな話をされたことはなかった。
この20年弱の間、一度も。
若い頃、そりゃ遊んだ時期もあった。
他のメンバーとはそんな話をしたことも
あったけど、
でも智くんとだけは一度もなかった。
「んー…。ちょっと気になっちゃった。」
ごめんねって謝ると、ソファーにごろんと
寝転がって目をつむってる。
ねぇ、何でそんなことを聞いてきたの?
俺が貴方を好きだって、知ってるでしょ?
…少しだけ、自惚れそうになる。
「じゃあさ、智くんは?」
「…んー?」
「智くんは彼女とかいないの?」
「いないよ。」
即答だった。
俺の目を見て真っ直ぐにそう言った。
俺も見つめたけど、でも智くんの瞳の
裏側までを読むことは出来なくて
「そっか…。」
それだけ言うのでやっとだった。
