テキストサイズ

ギムレット

第16章 ブルドッグ  守りたい

自分を犯したくせに平然とした顔で傲慢な態度をとる尚樹への嫌悪感、訳も分からずまた連れまわされることへの腹ただしさと恐怖と混乱から、急にパニックになり涙が溢れ出す顔を両手で覆った。


「もう……もうイヤ……何が何だかわからない……」


恐怖を押し殺そうと必死で身に着けていた鎧が一気に崩れ落ち、突然襲われたこの先の恐怖と不安に泣き出したメグを尚樹はそっと優しく抱きしめた。


「ごめん……混乱したな」


優しく彼女の髪を撫でながら続けて言った。


「今から俺の質問に答えて……お前はタクの何を知ってる」


「タクの何を……って……」


尚樹はメグの目を見て続けた。


「お前はタクのなんだ?彼女なのか?」


彼女?……メグは答えられなかった。最近の二人の関係は、以前よりもずっと近くなったと感じてはいても、普通の恋人同士なのかと聞かれれば、それは違う。


何よりも、タクについて、彼の本名さえも……何も知らなかった。



「私は……わか……わからない……彼にとっての何なのか?タクのこと……わたしは……きっと……何も知らない……」


とめどなく涙が溢れ出すメグを尚樹はもう一度きつく抱きしめた。


「それでいい。何も知らなくて……これからも知ろうとするな。“今は”……タクには会うな。今回のこともお前はタクに何もしゃべるな。時期を見て俺があいつに話す。いいな」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ