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ギムレット

第17章 アイ・オーブナー  運命の出会い

クズなあいつらを憎みすぎて、俺はいつしか、世の中全ての人間が、俺の憎しみと嫉妬の対象のような存在になっていった。


愛することなんて知らない。愛されることなんて知らない。


誰かを愛おしいと思う気持ちなんて……知らなかった。



でも、俺は、あいつに、和弥に会って変わった。

あいつが俺に……大切なことをたくさん教えて、そして今まで得られなかったものを与えてくれた。


俺と同じような境遇で育ちながら、あいつはその全てを達観していた。


「尚樹、ここまでは僕たちの宿命なんだよ。この世に生まれた時から、背負った宿命は、僕たち自身で変えることはできない。あの親から生まれたことも……僕たち自身が選べることなんてできないんだから。でもこの先は、運命。自分で自分の生きる命を運んでいくんだ。僕たちはその運命を生きるために、今、生きてるんだ」


あいつは背負った宿命を受け入れた。そして、この先の自らが選択して生きていく運命のために、この宿命を生き抜くんだ。と……


あいつがいなかったら、俺は今頃、刑務所暮らしだ。それも一生、その塀から出られない運命を、自ら選択していたはずだ。


今も紙一重の運命を選択しているのかもしれないが、それでも、俺はあいつに、憎悪の塊だった心を救ってもらった。


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