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ギムレット

第20章 スプリッツァー  真実(シュウ編)


一度だけ祖父に聞かれたことがあった。

「蓮、おやじに会いたいか?」と…

俺は少し驚いたような、でも嬉しく、そして照れた顔をして答えたと思う。


「うん、会ってみたいな。とは……思う」


祖父は少し悲しそうな顔をして「そうか…」そう答えただけだった。



子供だった俺は、祖父の気持ちも考えずに安易に答えた。
でももし今、同じことを聞かれたら絶対にそう答えないだろう。それは決して大人になった今だったら必死に育ててくれている祖父の心情を思いやって答えることができる。


そういう意味で言ってるんじゃない。


12歳のあの日に何があったのか…その過去を知っている今だからこそ、俺の答えはあの時とは違ってくる。
12歳のあの日の記憶をそのままに過去に戻れるなら、祖父に「おやじに会いたいか?」そう聞かれたあの日に戻れるなら…



俺はきっとこう答える。



--------- 会ったらその瞬間に殺してやる ---------



と…

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