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ギムレット

第5章 モヒート 心の渇きをいやして

一人裸でベッドに横たわると、寝具からタクの香りがした。

女の香りを思わせる甘いフルーティーベリーの香り。



このベッドで、私以外の誰かを、抱いているのかもしれない。



私はタクの仕事場での顔を知らない。

普段の素の顔も知らない。

体を求め合い、この部屋で私を抱いている時の顔しか


……知らない。



私以外の誰かも抱いている。


その相手が、タクにとって、どんな存在なのかは知らない。


そして、知りたくない。



タクにとっての私は、何かを忘れたいがために、現実から逃れたいがために、肉欲を求めているのだと分かっている。


私もまた、同じ思いで抱かれているのだから……


激しく快楽に落ちて、その一時だけでもいいから心の渇きを満たされたい。

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