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ギムレット

第6章 ベルモント やさしい慰め

シュウとは1年近く前に、私が時々行く小さな居酒屋で知り合った。

小さなカウンター席しかない店。

何度か会ううちに、いつの間にか顔馴染みになって自然と話すようになっていた。



シュウは、メーカー企業に勤めるエンジニア。
ここ最近は海外出張が多い。


「マイルだけは貯まるけど、今回も悲惨なバジェットホテルで参ったよ」


パジェットホテルとは、日本でいう格安ホテルの事だ。




「シュウ、少し日に焼けて、魅力的ね」


「少し、惚れた?」



向井シュウは、年齢27歳。身長は180㎝近くある。

学生時代はテニスに熱中していたらしく、日に焼けた少し浅黒い肌に、細身のボディは筋肉で締まってスーツ姿が映える。

髪は短く整えられているが、前髪にかかるサラッとした艶やかな濃い黒髪が印象的だ。

艶やかな濃い黒髪と違った薄い眉毛と、笑うと目じりが下がる一重瞼は、さっぱりした日本的な顔立ちで、口角の上がった優しい笑顔が親しみやすく、彼の魅力をより一層強調する。



「出会ったころから……ずっと好きよ」


「そのメグの警戒心のない言葉の裏に、俺を異性の対象としてみない、強い心理的な閉鎖を感じるよ」



シュウは、水割りのグラスの中の氷を揺らせて言った。



「俺はなかなか、メグのお兄ちゃん的存在から昇格しないな」

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