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ギムレット

第8章 ホワイト・ルシアン 愛しさ

「お待たせ」

「すごい綺麗。これは?」

「ホワイト・ルシアン」


ホワイト・ルシアンは、オールドファッショングラスに氷を入れて、ウォッカとコーヒーリキュールをステアし混ぜたブラック・ルシアンというカクテルに、生クリームを静かにフロートする。


下がコーヒー、上が生クリームの二層になっていて、見た目もとても楽しめる。


ホワイト・ルシアンは、厳冬のロシアの大地をイメージして作られたものとされているので、生クリームの白が厳冬のロシアを彷彿とさせる。




「美味しい。すごく飲みやすい」

「でもウォッカが入ってるからアルコール度数はあるよ」


優しく頬杖をついて見つめる目が……心を惑わされる。



「これで風邪もすっかり良くなりそうだわ」


白い歯を見せて優しく微笑み、「良かった」という言葉と一緒に柔らかい唇がそっと包む。



私は拒めない。だって……



──あなたのキスが好き



私の唇に、あなたの柔らかい唇を優しく押し当てる。そして上下の唇を噛むように交互にそっと触れて、ゆっくり何度も繰り返してから、全体の唇を奪っていく。
その後に、私の唇の間を舌先がそっと割って入ってくる。

ゆっくり……ゆっくり……何度も舌を絡めて、心まで刺激されていく。


「ごめん……触れてないと不安になるから……」


前は会えば、ただ体を貪るだけの時間を過ごすばかりだったのに、この間の一件以来、タクはむやみに私を抱かなくなった。



「でも、もっと一緒にいる時間、大切にするよ」



あなたの少し目を細めた、儚い表情の微笑みが……私を惑わす。


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