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ギムレット

第10章 スティンガー  危険な香り

カウンターの他の客が帰るために席を立った。周りに誰もいなくなったのを確認してから、シュウは率直に言った。


「じゃあ、話し早いね。今日は顔合わせに来た」


そう言うと、カウンター席にハルから「あれ忘れんなよ」そう言われたものを差し出して見せた。


それは、スティンガーのシークレットカード。


カードをサッと受け取ると、タクは会員ナンバーを確認し、素早くスマホから顧客データにアクセスし、相手の身元を確かめる。

スティンガーの顧客データにアクセスできるのは、契約制の会員スタッフだけに許された権限だ。


「確認しました」そう言うと、カードを相手に返却した。






「君、スティンガーに登録してどれくらい?」

「3年くらいです」



スティンガーとは、いわゆる男娼クラブ。

男娼(だんしょう)とは、売春する男性または買春される男性のことで「男性の娼婦」の意味だ。男色の相手としての男娼や女性に買春される男娼と二分されることが多い。



「君、両方いけるんだよね」


カウンターにテーブル席からのカクテルの注文が入る。


タクは素早くカクテルをシェイクして、ホールスタッフに注文のカクテルを渡す。ホールスタッフがカウンターから離れると、目線を相手に向けて、にこやかに答えた。



「そうです」



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