テキストサイズ

ギムレット

第14章 ライラ  今、君を想う

女が出て行ってしばらくすると、「おいっ!八代っ!ちょっと来い」と尚樹は大声を上げた。


八代(やしろ)とは、尚樹の部下である。尚樹の傍には常にボディガードのように、この八代と保(たもつ)という男二人がついている。


八代は26歳。身長は180㎝、体重は90㎏ちかいガタイのいい男だ。

保は22歳。165㎝、体重55㎏ほどの小柄な男だが、二人とも格闘技の経験がある。


「尚樹さん、失礼しますっ!」


ドアを開けて八代と一緒に保も部屋に入ってきた。


尚樹は二人の方に視線を移すと「保、てめえは呼んでねぇんだよ。耳ねえのかよ」と恫喝した。


「ハイっ!、すいません」

慌てて保は「失礼しますっ!」と言って部屋を出て行った。



尚樹の不機嫌な表情と保への恫喝で八代に緊張感が走る。


「今の女、もうヘルスじゃ借金返済は無理だな。ヘルスじゃ客もついてない。あの容姿と感度じゃ客もこれ以上つかない。そろそろソープに回しとけっ!」


自分への小言じゃないと分かってか、八代はホッとしたような安堵の表情で「ハイ、分かりました」と軽く返事をした。


「何が……分かったんだよ?ああっ?おい、てめえがしっかり管理できてねえ証拠だろうがっ!」


デスクの脇を足で蹴とばしながら、尚樹の鋭い眼光が八代を凍り付かせる。


「てめえ、次も今みてえな安易な答え方したら……ぶっ殺すゾ」


「ハイっ!すいませんでしたっ!」八代は床に頭が付きそうなくらいの姿勢で頭を下げた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ