風鈴が鳴らない時
第3章 散りぬる
「金持ちだった男の悲しい最後を見届けてオークションにかけられているのを目にしたり…質に出され、流れ流れてこの店に来ることや…いつだったかは、ある日気がついたらソコのそれ…」
おじいちゃんが指差す方を見ると種類がバラバラの椅子がいくつも置いてあった。
「椅子?」
「そうそう…揺り椅子の上に、いつの間にか置いてある事もありました…ところで音は聞きましたか?」
おじいちゃんの質問に、僕は首を横に降った。
「音が鳴るモノが入ってるんですか?」
おじいちゃんは、またニッコリ笑って…。
「君には無用の長物…かも知れませんねぇ…そうだソレは私に譲って下さい…代わりにコレを」
そう言ってユックリお店の中に戻って行くおじいちゃんに、僕は断りを入れた。
「僕も偶然拾ったんです…だから代わりに何か貰ったらおかしいんです」
僕の声が聞こえないのか、おじいちゃんは方向を変えること無く…お構いなしにユックリ動き続けた。
しばらくして戻って来たおじいちゃんの手には、昨日フリーマーケットで見かけた眼鏡が握られていた。
「え?なんでココに!?コレが?あれ?なんで!?」
「コレと物々交換してもらえますか?」
僕は返事もせずに桐箱を差し出して、夢中で眼鏡を受け取っていた。