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じゃん・けん・ぽん!!

第16章 暗中躍動

 脱出しようににも、そんなことのできる状態ではなかった。
 下駄箱を挟んで、校舎側からも玄関側からも敵が押し寄せている。両側を挟まれているから、出口がないのだ。柔道部が応戦しくれているから、晃仁と健人は無事だが、このままでは柔道部も消耗する一方だ。
 しかし、それを学も分かっていたらしい。
「後方突破!」
 ふたたび、するどく命令を出した。
「おう!」
 玄関側で応戦していた柔道部員が、学の命令に合わせて、えいやっとばかりに肩から敵にぶつかった。その力に負けたのか、玄関側の敵の一部が押されて、そこに隙ができた。その隙を、柔道部員も学も見逃さなかった。
「切り抜けろ!」
 学が三度目の命令を発した。
 それを受けて、弁慶集団に応戦していた柔道部員が反転した。そして、玄関側の敵が見せたわずかな隙に向かって殺到する。玄関側で戦っていた柔道部員も、そこへ集中的に向かっていった。
 強力な一点突破だった。
 その部分の敵は蹴散らされ、何人かは地面に転がった。怒涛の勢いで、柔道部員は校舎から外へ突き抜ける。
 晃仁と健人も、その流れに乗った。左右を柔道部員に守られながら、一気に外へ出た。
 脱出成功だ。
 息を切らせながら振り返ると、校舎を出たばかりの柔道部員が、追っ手をかけさせまいとして、また相手に向き合って足止めをしていた。
「早く逃げろ」
 と学が言った。
「は、はい」
 晃仁は叫ぶようにそう言った。その時だった。
 きらり。
 何かが光った。
 外はすでに暗くなっている。ほぼ闇と言ってもいいだろう。その真っ黒な景色の中に――。
 一瞬ではあったが、光がみえた。
 丸い形の光だった。しかもその光は、ふたつあった。丸い光が、ふたつ、横に並んでいたのだ。
 ちょうど校門の当たりだった。
 光は一瞬だけしか見えなかったが、見えなくなると同時に、何か大きなものが確かに動いた。
「健人、今の」
「見た」
 晃仁の見間違いではなかったらしい。
 どこかで見ているはずだ――。
 はじめにそう予想していたが、どうやらそれが当たったらしい。

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