じゃん・けん・ぽん!!
第16章 暗中躍動
晃仁は、下駄箱と下駄箱の間に、いつでも手を差し入れることができるように、その付近に這いつくばった。隙間が、わずかにひらく。
そこへ、光が差し込む。
――あった。
電灯の淡い光に照らされて、隙間に、一枚の紙が確かに見えた。
それを取ろうと、晃仁は手を隙間に入れてみた。しかし、まだ隙間の広さは充分ではない。手の付け根で、引っかかってしまう。
「健人、もう少し!」
うん、と健人はまた気合を入れた。時間があれば、もっとゆっくりと下駄箱を移動させることができるのだが、今は時間がない。学の率いる柔道部と弁慶集団が、対立している。喧嘩というほど激しい争いではないが、ちょっと油断すれば掴み合い、殴り合いにも発展しそうな殺気が漲っていた。柔道部から、ひとりでも良いから下駄箱の移動に力を貸してもらえれば健人も楽だろうが、柔道部は奴らを抑えるのに精いっぱいの様子だ。
がたり。
大きな音がした。隙間が、ぐっと広がった。これなら、体の小さな晃仁だったら確実に取り出すことができる。
ここぞとばかりに、晃仁は隙間に腕を突っ込んだ。そして紙を掴み、素早く引き寄せる。
回収は成功した。
そう思って安心した矢先のことだ。
「逃がさねえぞ!」
今度は玄関の方から、別の一団が押し寄せてきた。校舎側は柔道部が止めてくれているが、玄関側はがら空きだ。いきなりのことで、晃仁も咄嗟には対応が思いつかない。
晃仁は覚悟を決めた。
が、学が機敏に反応した。
「後方防御!」
鋭いひと声に、柔道部員の半分が、玄関側へまわる。それで玄関側からの攻撃も防がれた。人数としては柔道部の方が圧倒的に少ないが、それでも互角に渡り合っていられるのは、柔道が格闘技だからだろう。
心強い味方に、晃仁は心の中で礼を言う。
そして、一応、取り出した紙を確かめた。
もちろん、内容をすべて読むような余裕はない。が、斜め読みをしただけでも、それが、裕子から父へ宛てた手紙であることは確認できた。
あとは脱出するだけだ。
しかし――。
そこへ、光が差し込む。
――あった。
電灯の淡い光に照らされて、隙間に、一枚の紙が確かに見えた。
それを取ろうと、晃仁は手を隙間に入れてみた。しかし、まだ隙間の広さは充分ではない。手の付け根で、引っかかってしまう。
「健人、もう少し!」
うん、と健人はまた気合を入れた。時間があれば、もっとゆっくりと下駄箱を移動させることができるのだが、今は時間がない。学の率いる柔道部と弁慶集団が、対立している。喧嘩というほど激しい争いではないが、ちょっと油断すれば掴み合い、殴り合いにも発展しそうな殺気が漲っていた。柔道部から、ひとりでも良いから下駄箱の移動に力を貸してもらえれば健人も楽だろうが、柔道部は奴らを抑えるのに精いっぱいの様子だ。
がたり。
大きな音がした。隙間が、ぐっと広がった。これなら、体の小さな晃仁だったら確実に取り出すことができる。
ここぞとばかりに、晃仁は隙間に腕を突っ込んだ。そして紙を掴み、素早く引き寄せる。
回収は成功した。
そう思って安心した矢先のことだ。
「逃がさねえぞ!」
今度は玄関の方から、別の一団が押し寄せてきた。校舎側は柔道部が止めてくれているが、玄関側はがら空きだ。いきなりのことで、晃仁も咄嗟には対応が思いつかない。
晃仁は覚悟を決めた。
が、学が機敏に反応した。
「後方防御!」
鋭いひと声に、柔道部員の半分が、玄関側へまわる。それで玄関側からの攻撃も防がれた。人数としては柔道部の方が圧倒的に少ないが、それでも互角に渡り合っていられるのは、柔道が格闘技だからだろう。
心強い味方に、晃仁は心の中で礼を言う。
そして、一応、取り出した紙を確かめた。
もちろん、内容をすべて読むような余裕はない。が、斜め読みをしただけでも、それが、裕子から父へ宛てた手紙であることは確認できた。
あとは脱出するだけだ。
しかし――。