じゃん・けん・ぽん!!
第18章 毒牙を持つもの
そもそも、今回の騒動が起きたのは何故なのか。それは、下駄箱を交換してほしい――という要望を、健人が裕子に伝えたからだ。
では、なぜそんな要望を、健人は裕子に突きつけたのか。それは――。
他でもない。詩織にそう頼まれたからだ。
さらに掘り下げる。
では、なぜ詩織は、下駄箱の交換を望んでいたのか。それについての答えは、いまだに分からない。
なぜなら、詩織が答えないからだ。一度、それについて質問したこともあるが、その時は、
理由は、ちょっと話せないんですけど――。
そう答えたきりだった。思えば、問い詰めてみるべきだったのかもしれない。なぜ詩織は、下駄箱の交換を望んだのか――。
「俺が追っていた理由は、正直なところ自分でもわからないんだ」
まずは、詩織の質問に対して正直に答えた。
「わからないって――」
俯いていた詩織は、わずかに顔をあげて、健人の顔を見る。
儚い姿だ。まるで硝子で出来た人形のようだった。綺麗で思わず触りたくなってしまうが、下手に触るとすぐに欠けてしまう、場合によっては全身が砕け散ってしまう――そんな雰囲気が、詩織にはある。
「理由も分からないのに追ってくるって――」
「そもそも、なんで下駄箱を交換したいなんて言ったんだよ」
ふたりの言葉がぶつかり合った。健人の方が、声の大きさではまさっていた。そのせいか、健人の質問がその場を押し切った形になった。健人の問いは、かなり強く詩織の胸へ突き刺さったらしい。
「え」
詩織は、片手で制服の胸元を握りしめて、苦しそうにした。大丈夫か――と思わず声をかけそうになる。その瞬間――。
毒牙にかかっている――。
なぜだか、晃仁の言葉が頭の中に響いた。
「ですから、その理由は話すことができないって――」
「話してくれ」
今度は、意識的に詩織の言葉を押し切った。
男の血を吸って殺す吸血鬼みたいのものさ――。
またしても、晃仁の言葉が蘇る。
だんだんと、詩織が不気味なものに思えてきた。まるで、儚い硝子人形が、徐々に溶けだして、掴みどころのない怨霊へ姿を変えていくかのような、圧倒的な不安感だった。
では、なぜそんな要望を、健人は裕子に突きつけたのか。それは――。
他でもない。詩織にそう頼まれたからだ。
さらに掘り下げる。
では、なぜ詩織は、下駄箱の交換を望んでいたのか。それについての答えは、いまだに分からない。
なぜなら、詩織が答えないからだ。一度、それについて質問したこともあるが、その時は、
理由は、ちょっと話せないんですけど――。
そう答えたきりだった。思えば、問い詰めてみるべきだったのかもしれない。なぜ詩織は、下駄箱の交換を望んだのか――。
「俺が追っていた理由は、正直なところ自分でもわからないんだ」
まずは、詩織の質問に対して正直に答えた。
「わからないって――」
俯いていた詩織は、わずかに顔をあげて、健人の顔を見る。
儚い姿だ。まるで硝子で出来た人形のようだった。綺麗で思わず触りたくなってしまうが、下手に触るとすぐに欠けてしまう、場合によっては全身が砕け散ってしまう――そんな雰囲気が、詩織にはある。
「理由も分からないのに追ってくるって――」
「そもそも、なんで下駄箱を交換したいなんて言ったんだよ」
ふたりの言葉がぶつかり合った。健人の方が、声の大きさではまさっていた。そのせいか、健人の質問がその場を押し切った形になった。健人の問いは、かなり強く詩織の胸へ突き刺さったらしい。
「え」
詩織は、片手で制服の胸元を握りしめて、苦しそうにした。大丈夫か――と思わず声をかけそうになる。その瞬間――。
毒牙にかかっている――。
なぜだか、晃仁の言葉が頭の中に響いた。
「ですから、その理由は話すことができないって――」
「話してくれ」
今度は、意識的に詩織の言葉を押し切った。
男の血を吸って殺す吸血鬼みたいのものさ――。
またしても、晃仁の言葉が蘇る。
だんだんと、詩織が不気味なものに思えてきた。まるで、儚い硝子人形が、徐々に溶けだして、掴みどころのない怨霊へ姿を変えていくかのような、圧倒的な不安感だった。