じゃん・けん・ぽん!!
第6章 再戦!
※
「まず、甘星堂で健人が負けた理由をもう一度考えてみるといい」
喫茶かじかでの、晃仁とのやり取りを思い出す。
「俺が負けた理由は――」
晃仁が話した予想を、健人はあらためて振り返ってみる。
「それは、俺が緊張していたからだろ」
緊張して固くなった体でいれば、自然と拳を握りしめやすくなる。だからグーを出しやすくなる。それを裕子は見抜き、パーで健人に勝ったのだ。本当のところは分からないが、晃仁の予想ではそういうことだった。
それを言うと、晃仁は腕組みをし、その通り――と言って深く頷いた。そして次にこう言った。
「ならば、勝つためにはそれを逆に利用すればいい」
「利用って、どういうことだよ」
「だからさ」
相手が読んでくることを利用するってことさ――と晃仁は言った。小柄な友人は、男としても背が低いし、手足も細い。でも考えていることは、いつも健人の上を行っている。時には上どころが斜め上を行っている。だから健人は、この軟弱そうな友人に頭が上がらないことが多い。
「具体的に、どうすればいいんだ」
健人は机の上に身を乗り出して問いかけた。
「具体的にはね――」
晃仁はにやりと笑った。なんだか悪巧みをする政治家のようだった。けれども、これはあくまでじゃんけんの話なのだ。そんなに悪そうな顔をする必要はまったくない。
それでも晃仁はそういう悪い雰囲気を、歪めた口許に浮かべながら言った。
「今度じゃんけんをすることになったら、甘星堂の時と同じように体を固くするのさ。もちろん演技でね。気持ちの方は緩めていて構わない。そうすると、また緊張しているように相手には見える。そう見えると相手は、健人がグーを出してくると予想する。その裏をかくんだ。健人がグーを出すと予想したら、相手が出す手は自然と分かるだろ」
「ああ、なるほど」
そこまで説明されて、ようやく健人にも理解できた。その理解の正しさを、健人は確認する。
「つまり、俺がグーを出すと分かったら、相手はパーを出す。だからこっちはチョキを出せば勝てる――という寸法か」
「その通り」
つまり次は、手を読まれるのではなく、積極的に〝読ませる〟という戦法が有効だということだ。そして今日――。
※
その戦法を健人は実行した。
「まず、甘星堂で健人が負けた理由をもう一度考えてみるといい」
喫茶かじかでの、晃仁とのやり取りを思い出す。
「俺が負けた理由は――」
晃仁が話した予想を、健人はあらためて振り返ってみる。
「それは、俺が緊張していたからだろ」
緊張して固くなった体でいれば、自然と拳を握りしめやすくなる。だからグーを出しやすくなる。それを裕子は見抜き、パーで健人に勝ったのだ。本当のところは分からないが、晃仁の予想ではそういうことだった。
それを言うと、晃仁は腕組みをし、その通り――と言って深く頷いた。そして次にこう言った。
「ならば、勝つためにはそれを逆に利用すればいい」
「利用って、どういうことだよ」
「だからさ」
相手が読んでくることを利用するってことさ――と晃仁は言った。小柄な友人は、男としても背が低いし、手足も細い。でも考えていることは、いつも健人の上を行っている。時には上どころが斜め上を行っている。だから健人は、この軟弱そうな友人に頭が上がらないことが多い。
「具体的に、どうすればいいんだ」
健人は机の上に身を乗り出して問いかけた。
「具体的にはね――」
晃仁はにやりと笑った。なんだか悪巧みをする政治家のようだった。けれども、これはあくまでじゃんけんの話なのだ。そんなに悪そうな顔をする必要はまったくない。
それでも晃仁はそういう悪い雰囲気を、歪めた口許に浮かべながら言った。
「今度じゃんけんをすることになったら、甘星堂の時と同じように体を固くするのさ。もちろん演技でね。気持ちの方は緩めていて構わない。そうすると、また緊張しているように相手には見える。そう見えると相手は、健人がグーを出してくると予想する。その裏をかくんだ。健人がグーを出すと予想したら、相手が出す手は自然と分かるだろ」
「ああ、なるほど」
そこまで説明されて、ようやく健人にも理解できた。その理解の正しさを、健人は確認する。
「つまり、俺がグーを出すと分かったら、相手はパーを出す。だからこっちはチョキを出せば勝てる――という寸法か」
「その通り」
つまり次は、手を読まれるのではなく、積極的に〝読ませる〟という戦法が有効だということだ。そして今日――。
※
その戦法を健人は実行した。