テキストサイズ

じゃん・けん・ぽん!!

第11章 対立!!

 敵の手法を見破って、それを取り込んで利用するとは、やはり策士だ。
「それにしても、どうやって、四人も説得したの」
 一人だけでも難しいだろう。すると、晃仁はちょっと照れたように笑って、
「こういう見てくれですから」
 と言った。
「見てくれ?­」
 あらためて晃仁を見る。
 茶髪に、丸い顔に、小柄な体躯。
 ――なるほど。
 合点がいった。彼の容姿なら、女子生徒には――とくに歳上の女子生徒には――可愛いと思われることは容易に想像がつく。純朴そうな顔をして、とんだ女たらしだ。
 ともかく、この穏健そうで実はずる賢い後輩のおかげで、祐子は下駄箱の交換に応じずに済んだのだ。感謝しなくてはいけないだろう。
「ありがとう」
 裕子は、素直に礼を言った。
「とんでもないです」
 晃仁は、母性をくすぐる幼い笑顔でそう言った。
「それじゃ、僕は電車があるので」
 そう言って晃仁は椅子から立ち上がった。その時だ。
 大きな男が、晃仁の背後にぬっと立ちはだかった。
 馬淵学だった。柔道で鍛えあげられた体躯は、晃仁とは対照的に大柄で、まるで岩のようだ。
「今の話、聞いたぞ」
 と学は低い声を出す。
「え」
 晃仁は背後を振り返り、そして固まった。無理もない。晃仁は頭は働くようだが、見るからに肉弾戦には弱そうだ。正面きって凄まれたらどうしようもないだろう。
「汚い手を使いやがって」
 言うや否や、学は晃仁の胸ぐらを掴みあげた。晃仁の体は難なく浮き上がる。
「やめなさい!」
 祐子は思わず立ち上がって、机を両手で叩いて大声をあげた。しかし学は耳を貸す気配を見せない。
「この野郎ッ」
 学は、空いた片方の手を拳に握って振り上げる。
 ――まずい!
 祐子は咄嗟に叫んだ。
「早くノート返してよッ」
「え」
 学の力が抜けた。持ち上げられていた晃仁が、学の手から落ちる。胸元を掴まれていたから息が詰まっていたのだろう。晃仁は床に尻餅をついて、けほけほ、と咳をしている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ