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じゃん・けん・ぽん!!

第13章 会長のヒ・ミ・ツ

「会長は見たわけでもないのに、あの音を町田家具の車のものだと見破りました。同じ時刻に、別の会社の大型車も通るというのに、です」
「なにが言いたいの」
 いかにも不機嫌といった様子で、祐子は目を細める。
「大事なことだと思うんです。会長は手紙を見られたくないんですよね。生徒ではなくて――」
 お父さんに――と晃仁は言った。
「なんでもお見通しなんだね」
 祐子は、悲しそうに笑った。
「そう、お父さんに見られたくないの。もし下駄箱の交換が実現したら、間違いなくうちに注文が来る。そうすると、交換作業をやっている時に、けっこうな確率で手紙が見つかっちゃうから――」
 ちょっと意識しすぎていたのかも――と祐子は言った。
 つまり、下駄箱交換が行われて手紙が見つかってしまうことを意識すぎたあまり、車の音を町田家具のものだと思い込んでしまっていた――ということだろう。
「でも、学校の中の、あの対立を何とかしないといけないと思うの。晃仁くんのおかげで今のところ下駄箱交換はせずに済んでいるけど、おかげで、下駄箱交換の他に空調設置っていう要望が出てきて、それも何とかしないといけなくなっちゃった。いつまでもこの対立を続けさせておくわけにはいかないし、といって、下駄箱交換はしたくないし――」
 どうしよう――と祐子は溜息混じりに言った。
「ですから、それは――」
 じゃんけんなら公平に決められますよ――と晃仁は言った。
「数で拮抗しているわけですし、話し合いをしても、たぶん論破された方は心にしこりを残します。だから下手に論理的に解決するよりも、じゃんけんで運に任せた方が納得してもらえるんじゃないかって――」
「ちょちょちょっと待った! 待った!」
 祐子は晃仁の言葉を遮った。日に焼けた細い腕を、目いっぱい横に広げる。

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