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じゃん・けん・ぽん!!

第13章 会長のヒ・ミ・ツ

「じゃんけんって、どうやるの?­ 全校生徒が対立してるんだよ」
「ですから、下駄箱交換派と、空調設置派からそれぞれひとりずつ選手を出して、みんなの前でじゃんけんをするんです」
「そんなの駄目!」
 祐子は両手を机につくと、身を乗り出して、晃仁に顔をぐっと寄せて言った。
「じゃんけんって、だったら私がここまで話してきたことはどうなるの! 私は手紙を見られたくないの! もしじゃんけんなんかやって私が負けちゃったら、もう駄目じゃん!」
 顔がとても近い。肌の肌理まで見て取れるほどだ。そんな間近で見る、会長の必死な顔は、とても――。
 可愛らしかった。年上だけれども。
 晃仁がつい見とれていると、
「なんで黙ってるの」
 小麦色の端正な面に、怪訝そうな表情を浮かべながらそう言った。目を半分閉じている様子は、まるで不審者を警戒するが如くだ。
「な、なんでもないです。とにかく――」
 晃仁は気分を切り替えて裕子の憂いを解決する方法を説明した。
「負けたら、確かに会長の書いた手紙が、お父さんや、もしかしたら別の人にも見られてしまうかもしれません。でも、それは普通にじゃんけんをやったらの話です」
「どういうこと、それ」
「つまり――」
 内応すればいいんですよ――と晃仁は言った。
「ないおう?­」
 いささか気分が落ち着いたのか、身を乗り出していた裕子は、おとなしく椅子の背もたれに背中を預けた。しかし今度は、整った眉の尻をさげて腕組みをしている。
「ですから、じゃんけんをする相手、つまり、下駄箱交換派の〝選手〟と取引をするんです」
「相手が誰になるのか分からないのに、どうやって」
「誰が選手になるのかは、確かにわからないですけど、でも――」
 そこで晃仁は、ちらりと学の顔に目をやった。そのまま見つめ続ける。
 祐子もまた、学の顔をみた。
 しばらく沈黙が続く。
「なんだよ」
 と学は言った。沈黙と注目に耐えきれなくなったのだろう。

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