じゃん・けん・ぽん!!
第13章 会長のヒ・ミ・ツ
「そういえば、なんで二人はここにいるの」
そう問いかけたのは、裕子だった。
「あれ、話してませんでしたっけ」
晃仁は愛想笑いを浮かべる。
「話してないよ」
と祐子は答えた。その通りだった。ここにいる理由は、祐子が闖入してきた時にすでに質問している。しかしその時は、ただノートを返しただけだった。そこから、ノートの筆跡を見たの見ないのと騒ぎになってしまい、結局、なぜここにいるのか、という問いには答えていないのだった。
「それは――」
答えていいものか、どうか、晃仁は学へ視線をやって、目つきだけで相談をする。
「仕方ないな」
と学が言った。そして学は、みずから語った。
「俺たちがここにいるのは、さっきのノートを取りに来たからだよ。ここに――忘れていったんだ」
「ここに!?」
祐子は目を丸くして、口を手で覆った。びっくりしているらしい。その驚きは、分からなくもなかった。学のようないかにも武道家然とした男に、ケーキ屋はなんとなく似合わない。それは晃仁も感じたことだった。
祐子が見せた表情に、学はやれやれといった様子で頭をかいた。
きっと気に障ったのだろう。晃仁が意外に思った時も、その反応が厭だったんだと学は言っていた。
学のそんな胸中を知ってか知らずか、祐子はさらに踏み込む。
「なんで、このお店に来たの。というか、ここにノートを忘れたってことは、以前にも来たことがあるってことだよね。あなたの好みからして、率先して来るとは思えないんだけど」
それは晃仁も思っていたことだ。しかし後輩という立場上、また腕力に差があるために、訊けずにいたのだ。
学は口をへの字に曲げて、渋面をつくった。
「自分の意思ではないんですね」
晃仁はそっと尋ねた。それを受けて、学は渋い顔のまま、わずかに顎をひいた。頷いたのだろう。
「なるほど――」
――やはりな。
晃仁には、心当たりがあった。
このような甘味処へ来るのは、学の好みではない。それは学の答えからも、また印象からも察することができる。だとすれば、学が以前にここへ来たのは、誰か別の人間の意思によるものということだ。
そう問いかけたのは、裕子だった。
「あれ、話してませんでしたっけ」
晃仁は愛想笑いを浮かべる。
「話してないよ」
と祐子は答えた。その通りだった。ここにいる理由は、祐子が闖入してきた時にすでに質問している。しかしその時は、ただノートを返しただけだった。そこから、ノートの筆跡を見たの見ないのと騒ぎになってしまい、結局、なぜここにいるのか、という問いには答えていないのだった。
「それは――」
答えていいものか、どうか、晃仁は学へ視線をやって、目つきだけで相談をする。
「仕方ないな」
と学が言った。そして学は、みずから語った。
「俺たちがここにいるのは、さっきのノートを取りに来たからだよ。ここに――忘れていったんだ」
「ここに!?」
祐子は目を丸くして、口を手で覆った。びっくりしているらしい。その驚きは、分からなくもなかった。学のようないかにも武道家然とした男に、ケーキ屋はなんとなく似合わない。それは晃仁も感じたことだった。
祐子が見せた表情に、学はやれやれといった様子で頭をかいた。
きっと気に障ったのだろう。晃仁が意外に思った時も、その反応が厭だったんだと学は言っていた。
学のそんな胸中を知ってか知らずか、祐子はさらに踏み込む。
「なんで、このお店に来たの。というか、ここにノートを忘れたってことは、以前にも来たことがあるってことだよね。あなたの好みからして、率先して来るとは思えないんだけど」
それは晃仁も思っていたことだ。しかし後輩という立場上、また腕力に差があるために、訊けずにいたのだ。
学は口をへの字に曲げて、渋面をつくった。
「自分の意思ではないんですね」
晃仁はそっと尋ねた。それを受けて、学は渋い顔のまま、わずかに顎をひいた。頷いたのだろう。
「なるほど――」
――やはりな。
晃仁には、心当たりがあった。
このような甘味処へ来るのは、学の好みではない。それは学の答えからも、また印象からも察することができる。だとすれば、学が以前にここへ来たのは、誰か別の人間の意思によるものということだ。