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じゃん・けん・ぽん!!

第13章 会長のヒ・ミ・ツ

「つまり、俺は騙されていたのか」
「いえ、騙されていたというよりは、魅せられていたんです。そして魅せられた上で――」
 利用されていたんです、たぶん――と晃仁は言った。
 学は溜息をついた。そうだとすれば、悔しいことこの上ない。
「学先輩、それでも下駄箱交換派を支持しますか」
 即答はできなかった。何しろ、晃仁のことだ。これは大掛かりな、下駄箱交換派の切り崩し工作かもしれない。とはいえ、今思うと、下駄箱交換派に回ったのは、裕子に対して悪かったように思う。
 魅せられて利用されていた部分もあったかもしれないが、学が下駄箱交換派に回った理由には、学自身の意思も、あるにはあったのだ。それは、どう接しても自分に振り向いてくれない裕子に対する、いわゆる嫌がらせのような気持ちだ。小さな男の子が、好きな相手にちょっかいを出してわざと怒らせるそれと同じだ。とても幼稚で恥ずかしい動機だ。
 幼稚で恥ずかしい上に、自らそうしたにも関わらず、裕子との関係が気まずいのには参っていた。だから学は、これをいい機会と捉え、その態度をあらためた。
 まず、魅せられて利用されていたことを認めた。しかし、幼稚で恥ずかしい動機については語らなかった。利用されたのだから、少しくらいは嘘をついてもいいだろう、という理屈にもならない理屈だった。
 そして、下駄箱交換派の支持をやめることを告げた。ただし、空調設置派にも回らないことを伝えた。
 晃仁の真意が見られなかったからだ。どうにでも身を振れるようにしておきたかったのだ。
 しかし、その条件で、裕子も晃仁も納得してくれた。
 ようやくひと通りの話が終わった気がする。
 思わず、ふう、と息をつくと、晃仁が元の朗らかさを取り戻して言った。
「それじゃ、すぐに代表を決めましょう。空調設置派の代表は、会長がいいと思います」
「は!? 私がやるの?­」
 祐子は人差し指で自分の鼻を指しながら眉を歪めた。
「晃仁くんがやるんじゃないの?­ だって、派閥を作ったのは、晃仁くんの顔の広さのおかげなわけだし・・・・・・」

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