じゃん・けん・ぽん!!
第14章 第1回戦
はじめは、単なる気まぐれだと思った。しかし、学が裕子に反旗を翻した理由を知った今は、とても単なる気まぐれではなかったのではないか、という気がしてならなかった。
確証があるわけではなかったが、万が一のことを考えるなら、健人も毒牙にかかっているという考えははずせなかった。
そこで、晃仁は嘘をついた。
相手の出す手を探ってくる――。
そう言って、晃仁は、相手――つまり裕子――の許へ行ったのだった。いや、行くふりをしたのだ。
本当は、適当に喧騒の中を歩いてから健人のもとへ戻り、
相手はパーを出す、だからチョキを出せ――。
とでも言うつもりだったのだ。そうすれば、健人は素直にチョキを出すだろう。その後で急いで裕子の許へ駆け戻り、
健人にはチョキを出すように言ったから、グーを出せば勝てる――。
そう伝えようと思っていた。
健人は友人だ。だから素直に説得しようと思ったのだが、もし健人が毒牙にかかっているとすれば、いくら友人とはいえ説得は難しくなるだろう。そう踏んで、申し訳ない気持ちはあったものの、健人を騙すことにしたのだった。毒牙にかけられるとどうなるかを、友人だからこそ教えてやりたいという思いもあった。
そんな複雑な思惑を抱えながら、晃仁は人混みの中を歩いていた。
そして適当な時間が過ぎた頃、そろそろ健人の許へ嘘を言いに行こうと晃仁は思った。その矢先のことだった。
「やあ」
声をかけられた。体格のいい男だった。見るからに格闘技の心得のありそうな様子の、大きな男だった。
「暑いよね。ちょっとジュースでも飲まないか。奢ってやるからさ」
「い、いえ、僕は、ちょっと用事がありますから・・・・・・」
晃仁は断ったが、
「用事って何」
また別の男に呼び止められた。どうやら、ふたりは友達のような関係らしい。見れば、背の低い晃仁を、凶暴さを秘めた眼差しで見下ろしている連中が、ほかに三人ほどもいる。
取り囲まれているから逃げようにも逃げられなかった。とはいえ、人混みの中だから相手も正面を切って乱暴をするような真似はみせない。
確証があるわけではなかったが、万が一のことを考えるなら、健人も毒牙にかかっているという考えははずせなかった。
そこで、晃仁は嘘をついた。
相手の出す手を探ってくる――。
そう言って、晃仁は、相手――つまり裕子――の許へ行ったのだった。いや、行くふりをしたのだ。
本当は、適当に喧騒の中を歩いてから健人のもとへ戻り、
相手はパーを出す、だからチョキを出せ――。
とでも言うつもりだったのだ。そうすれば、健人は素直にチョキを出すだろう。その後で急いで裕子の許へ駆け戻り、
健人にはチョキを出すように言ったから、グーを出せば勝てる――。
そう伝えようと思っていた。
健人は友人だ。だから素直に説得しようと思ったのだが、もし健人が毒牙にかかっているとすれば、いくら友人とはいえ説得は難しくなるだろう。そう踏んで、申し訳ない気持ちはあったものの、健人を騙すことにしたのだった。毒牙にかけられるとどうなるかを、友人だからこそ教えてやりたいという思いもあった。
そんな複雑な思惑を抱えながら、晃仁は人混みの中を歩いていた。
そして適当な時間が過ぎた頃、そろそろ健人の許へ嘘を言いに行こうと晃仁は思った。その矢先のことだった。
「やあ」
声をかけられた。体格のいい男だった。見るからに格闘技の心得のありそうな様子の、大きな男だった。
「暑いよね。ちょっとジュースでも飲まないか。奢ってやるからさ」
「い、いえ、僕は、ちょっと用事がありますから・・・・・・」
晃仁は断ったが、
「用事って何」
また別の男に呼び止められた。どうやら、ふたりは友達のような関係らしい。見れば、背の低い晃仁を、凶暴さを秘めた眼差しで見下ろしている連中が、ほかに三人ほどもいる。
取り囲まれているから逃げようにも逃げられなかった。とはいえ、人混みの中だから相手も正面を切って乱暴をするような真似はみせない。