じゃん・けん・ぽん!!
第14章 第1回戦
読まれることがなければ、先手を打たれることもない。そうすると、あとは運だけだ。そうなれば勝ちの目もあることだろう。
それが、健人の考える勝算だった。いや、勝算と言えるほど立派なものではない。負けないかもしれない、というくらいのものだ。
それでも、健人の考えでは、それを考えるくらいが精いっぱいだった。
健人は、台へ上がってから、すぐに目を閉じた。
どの手を出すかは、その閉じている目を開けてから決める予定だった。
目を開いて真っ先に目に入ったのが、もし女子生徒ならグー、男子生徒ならチョキ、教師だったらパーを出す――そう決めていた。なるべく、出す手を決めるのは直前であるほうがいい。可能なら、じゃんけんぽんの掛け声の、ぽんの段階で初めて目を開けるのが理想的だ。祐子が読む時間が、短ければ短いほど健人の策は有効になる。
だから、台に上がってからずっと、健人は目を閉じていた。しかし――。
「健人くん」
裕子から声をかけられた。さすがに無視するわけにもいかないから、健人は目を閉じたまま返事をした。
「はい」
「なんで、目を閉じてるの」
「読まれるからです」
そう答えると、ふふ、と祐子は笑った。
「なるほど。分かった。じゃあ目を瞑ったままでいいから聞いて」
健人は妙に思った。目を閉じているからわからないが、きっと生徒たちは目を凝らして健人たちを見ているに違いない。さっきまでの喧騒がやんでいることから、そう察することができる。その注目を浴びながらも、裕子は話しているのだろうか。
とにかく聞くことはできるので、裕子の次の言葉を健人は待った。
少しの間をおいて、祐子は声を落として、そっと、こう言った。
「私はグーを出す」
「え」
つい、声をあげてしまった。それと同時に、うっかり目を開けてしまった。アッと思ったが開けてしまったのだからしょうがない。あとでまた目を瞑れば済む話なので、そのまま目を開いて裕子を見た。
ほっそりとしたしなやかな体に、褐色に焼けた肌。髪は僅かな風にも靡き、常にさらさらと揺れている。しっとりとした睫毛に縁取られた二重の瞳は、まるで井戸のように深い。
あいかわらずハッとするような美人だ。
それが、健人の考える勝算だった。いや、勝算と言えるほど立派なものではない。負けないかもしれない、というくらいのものだ。
それでも、健人の考えでは、それを考えるくらいが精いっぱいだった。
健人は、台へ上がってから、すぐに目を閉じた。
どの手を出すかは、その閉じている目を開けてから決める予定だった。
目を開いて真っ先に目に入ったのが、もし女子生徒ならグー、男子生徒ならチョキ、教師だったらパーを出す――そう決めていた。なるべく、出す手を決めるのは直前であるほうがいい。可能なら、じゃんけんぽんの掛け声の、ぽんの段階で初めて目を開けるのが理想的だ。祐子が読む時間が、短ければ短いほど健人の策は有効になる。
だから、台に上がってからずっと、健人は目を閉じていた。しかし――。
「健人くん」
裕子から声をかけられた。さすがに無視するわけにもいかないから、健人は目を閉じたまま返事をした。
「はい」
「なんで、目を閉じてるの」
「読まれるからです」
そう答えると、ふふ、と祐子は笑った。
「なるほど。分かった。じゃあ目を瞑ったままでいいから聞いて」
健人は妙に思った。目を閉じているからわからないが、きっと生徒たちは目を凝らして健人たちを見ているに違いない。さっきまでの喧騒がやんでいることから、そう察することができる。その注目を浴びながらも、裕子は話しているのだろうか。
とにかく聞くことはできるので、裕子の次の言葉を健人は待った。
少しの間をおいて、祐子は声を落として、そっと、こう言った。
「私はグーを出す」
「え」
つい、声をあげてしまった。それと同時に、うっかり目を開けてしまった。アッと思ったが開けてしまったのだからしょうがない。あとでまた目を瞑れば済む話なので、そのまま目を開いて裕子を見た。
ほっそりとしたしなやかな体に、褐色に焼けた肌。髪は僅かな風にも靡き、常にさらさらと揺れている。しっとりとした睫毛に縁取られた二重の瞳は、まるで井戸のように深い。
あいかわらずハッとするような美人だ。