じゃん・けん・ぽん!!
第14章 第1回戦
綺麗に並んだ白い歯が、ちらりと覗いた。褐色の肌に、その白さがよく映える。
「健人くんは勘違いしてるよ。感謝されることと、味方されることは違うんだよ」
分からなかった。健人が詳しい説明を求めると、裕子は視線を周囲に巡らせながら言った。
「敵意はどんな形でも剥き出しにできる。無視したり、偶然を装ってわざとぶつかってみたり、ものを壊したりね」
それには健人も頷けた。そういう形の虐めがあるというのは、よく耳にする。
「でもね」
裕子は続ける。
「そんなふうに悪意を向けられた時に、感謝してくれる人が必ずしも味方をしてくれるとは限らないでしょ。もし下手に味方をしたりなんかしたら、今度は自分が悪意の対象になっちゃうこともあるんだから」
それにも健人は頷けた。虐め問題でよく注目されているのが、傍観者の存在だ。
裕子の言葉を、健人はしばらく吟味してみたが、おかしなところは特になかった。
「だから、勝ちは譲ってあげる。私はグーを出すから、健人くんはパーを出すんだよ」
わかりました――と言いそうになったが、健人は寸前で思いとどまった。納得しかけたが、裕子の言い分にはまだ納得できないものがある。恨みを買うことが怖い、だから勝ちを譲る――だとすれば、それは――。
――それは。
「それは俺にも言えることじゃないですか。会長は、俺が恨みの対象になってもいいって言うんですか」
しかし、裕子は案外悩むような様子も見せずに、その問いかけに答えた。
「そんなことはないよ。健人くんは人気もあるみたいだし級長だし、何より――」
晃仁くんがいるでしょ――と裕子は言った。
「晃仁――が?」
「そうだよ。私は三年生だから、滅多に晃仁くんには会えないけど、健人くんは、晃仁くんと同級生でしょ。だから、何かあったとしても、きっと何とかなる。私は別に、健人くんがどうなってもいいとは思ってないよ」
「健人くんは勘違いしてるよ。感謝されることと、味方されることは違うんだよ」
分からなかった。健人が詳しい説明を求めると、裕子は視線を周囲に巡らせながら言った。
「敵意はどんな形でも剥き出しにできる。無視したり、偶然を装ってわざとぶつかってみたり、ものを壊したりね」
それには健人も頷けた。そういう形の虐めがあるというのは、よく耳にする。
「でもね」
裕子は続ける。
「そんなふうに悪意を向けられた時に、感謝してくれる人が必ずしも味方をしてくれるとは限らないでしょ。もし下手に味方をしたりなんかしたら、今度は自分が悪意の対象になっちゃうこともあるんだから」
それにも健人は頷けた。虐め問題でよく注目されているのが、傍観者の存在だ。
裕子の言葉を、健人はしばらく吟味してみたが、おかしなところは特になかった。
「だから、勝ちは譲ってあげる。私はグーを出すから、健人くんはパーを出すんだよ」
わかりました――と言いそうになったが、健人は寸前で思いとどまった。納得しかけたが、裕子の言い分にはまだ納得できないものがある。恨みを買うことが怖い、だから勝ちを譲る――だとすれば、それは――。
――それは。
「それは俺にも言えることじゃないですか。会長は、俺が恨みの対象になってもいいって言うんですか」
しかし、裕子は案外悩むような様子も見せずに、その問いかけに答えた。
「そんなことはないよ。健人くんは人気もあるみたいだし級長だし、何より――」
晃仁くんがいるでしょ――と裕子は言った。
「晃仁――が?」
「そうだよ。私は三年生だから、滅多に晃仁くんには会えないけど、健人くんは、晃仁くんと同級生でしょ。だから、何かあったとしても、きっと何とかなる。私は別に、健人くんがどうなってもいいとは思ってないよ」