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先生の秘密

第3章 ◎VS

「はい、やるよ」
そう言って10匹も金魚が入っている袋を差し出す和樹。
「…あ、りがと」
ねぇ、さっきのは冗談?
幼なじみとして…?
つったったままのあたしを見て、和樹はあたしの腕を掴んで歩き出す。
屋台が並ぶ道から外れた方にぐんぐん歩をすすめて行き、人気のない神社の境内に来た。
適当なところにあたしも座らされる。
「心、」
…ドクン、
真剣な声。
静かな空気。和樹の手があたしの頭に伸びてきて、ビクッとするあたし。
「そんなこわばんなよ。」
和樹の手はあたしの髪飾りに触れた。
「やっぱすげー似合ってる。浴衣も、可愛い」
和樹の口から出たものとは思えないほどの甘い言葉。
いつも鈍感と言われるあたしでも、この状況を理解できる。
ドクン、ドクン、
段々速くなるあたしの心臓の音。
やけに元気に泳ぎ回る袋の中の金魚たち。
「心、」
もう一度、真剣な声で呼ばれたあたしの名前。
「好きだよ。」
時間が止まったような感覚。あたしの頭はそりゃあもうお祭り騒ぎのようにパニック。
「何か言えコラ」
そう言って頭をコツン、とされる。
「…いや……あの、その…」
もうあたしは何も言えなくて。
すると視界が急に真っ暗。

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