あたしの好きな人
第9章 恋しない女
「大いに関係あるね、そのことが原因でゲームに支障をきたすと困るんだ」
「ゲーム?まだそんなこと言ってるの?」
「俺に惚れない女は居ない、咲良をどうおとすかが楽しいんだから、おちない理由も知りたい」
……そんな理由。
呆れた……ため息をついて、口を開く。
「社長とは何もないわ、ただ親身になってくれただけ。お腹の子は全く別の人よ、おろすわけないわ、ただお腹の中で死んでしまったのよ、……これで満足?」
信号が変わり、アクセルを踏む。
横断歩道を若い妊婦さんが、ゆっくり歩いて渡っている、
その隣には優しそうな旦那さんがいて、手を引いて歩いていた。
それを横目に見ていた。
「……悪かった」
「車の中は暑いわね?」
聞こえない振りして、車の窓を少し開ける。
「暑いなら脱いでも俺は構わないよ」
「うるさい」
いつの間にか、緊迫した雰囲気は和らいで、海の見える大きなホテルが見えてきた。
近くに観覧車があり、絶好のロケーションだ。
皓さんと一緒にホテルに入り、打ち合わせをする。
次期社長だから、ただ連れ歩くぐらいでいいと思っていたけど、
意外にも真面目に仕事して、突っ込んだ質問を沢山された。
特に人数、予算、売上。
……そういえば大学は法学部、税務署で勤務していたって言ってたっけ?
「……数字が好きなのね?」
「分かりやすいからね?必ず答えが出るから」
……そういうもんだろうか?
お陰でスムーズに打ち合わせが終わり、ホテルを出ようとしたら、
皓さんがあたしの耳元で甘く囁いた。
「……ついでにホテルでセックスして帰ろうか?」
「……殴るわよ」
皓さんの腕からすり抜けて、エンジンをかけて、会社に戻った。