あたしの好きな人
第3章 友人が本気になったら
おばあちゃんのベッドの傍で、暫く泣いていた。
お母さんは忙しそうに出たり入ったりして、看護師さんが何人か来て、
おばあちゃんの体を消毒したりする。
葬儀屋が来て遺体が実家に運ばれるようになり、あたしも実家に行かないといけないから、
会社に連絡して休むことを伝えた。
実家は電車でいうと隣の駅で、そんなに遠い距離じゃない。
一旦家へとタクシーで岳人と向かい、荷物を纏めた。
「随分沢山、衣類いれるんだな?」
荷造りするあたしを手伝ってくれて、会社の人が暫く休んでいいと言ったことを伝える。
「そうか……それにしても多くねぇか?」
今まで仕事を休むことは、ほとんどなかった。
おばあちゃんの話を良くしてたから、店長は気を使ってくれて、一ヶ月近くの休日を与えてくれた。
そうしてそのまま、大阪に行くことにしてもいいと、何回かは会社に行くことにはなるだろうけど。
気持ちの整理をつけて、新店舗に向けて前向きに過ごして欲しいと言われたんだ。
あたしはそれをまだ岳人には伝えてない。
荷物を纏めて鞄を持って立ち上がる。
「……咲良、大丈夫か?」
心配そうに揺れる、切れ長の瞳をまともに見れずに、岳人に抱きしめられた。
「……大丈夫、あたしは大丈夫だよ?」
岳人に抱きしめられるのは、何回目だろう。
安心してしまう。
だけど……。
「……行って来るね?」
……暫く会えない。
そう思いながら別れた。