あたしの好きな人
第4章 離れて気付く思い
実家に帰り、お通やがあり、あれよあれよというまに葬式を済ませる。
親族が集まりバタバタした日々を過ごした。
あたしは……実家で暫くゴロゴロしていた。
はっきり言って、呆然とした日々を過ごしていた。
時々会社に呼ばれて、またすぐに実家に戻る。
そんな日々をだらだらと過ごしてしまい、洋子が遊びに来ていた。
「結婚式の案内状よ~」
直接、手渡しで渡されて、半年後のハワイ挙式に、披露宴はカミヤダイニング系列のプリンスホテルだと気付いた。
「ふうん、いいじゃないの?」
あたしが担当になって、動きたい気持ちになるけど、今はそんな余裕はない。
「みんな咲良のこと心配してるよ~、岳人は最近忙しいみたいでね、自分で起業して自分の店を出すみたいよ?」
「そうなの?」
そういえば、そのようなことを、言ってたような気がする。
「あたしも会社は寿退社したからさ、暇なんだけど、今日は病院に健診に行くついで~」
「そっか、じゃあ、気を付けてね?」
玄関まで見送って、手を振ってドアを閉めた。
部屋に戻ると、ケータイの着信が鳴っていた。
……岳人からだ。
「もしもし?」
「よぉ、咲良、昼メシ食いに行かね?」
……久しぶりに聞いた岳人の声は、やっぱり掠れたようなセクシーな声で、ドキリとした。
「うん、行きたいっ」
ちょうどお腹空いてたから、食い付き気味にそう言うと、電話越しにホッと言う気配がした。
「んじゃあ、後で迎えに行くから」
それだけ言って、プツリと切れた。
……岳人が迎えに来る?
基本的にタクシーに乗ってるイメージしかない。
っていうかそもそも、昼間にランチとか行った事ないような気がする。
慌てて部屋に戻り、服を選んで身支度を整えた。
まるでデートの準備みたいだと気付いて、慌てて普段と変わらない服装に着替えた。
玄関のインターホンが鳴り、すぐにドアを開けた。
「……よぉ、久し振り、お前の母ちゃんは?」
「今日は仕事に行ってるけど?」
「そっか、前会った時にちゃんと挨拶してねぇなと思ってな?うちの店のクッキー、渡しとけよ?」
それなりに大きな紙袋を渡されて、首を傾げた。
「お中元?」
「馬鹿かっ、手作りクッキーだ、うちも箱詰めラッピングやってんだよ、持ち帰り用にな?」