あたしの好きな人
第4章 離れて気付く思い
「へぇ、そうなんだ」
「普通の女の子は好きだろ甘いのが、お前は興味ないだろうが、これが結構売れてるんだよ?」
一応、バーなのに、スウィーツなんだ?
お酒やパスタばかりで、基本的に甘いモノはそんなに好きじゃない。
「お母さんは好きだから喜ぶよ、ありがとう」
「お前もしっかり食って太っとけ、ほら、行くぞ?」
スタスタと歩きはじめる岳人に、玄関の鍵を閉めて、慌てて追いかけた。
久し振りに見た岳人は、やっぱり美形で目を引く存在感を醸し出していた。
歩いてランチに行くかと思ったら、さっと手を上げてタクシーに乗り込む。
「◯◯プリンスホテル」
行き先を告げて、さっき洋子の招待状で見た、披露宴の場所だと気付いた。
「◯◯プリンスホテルでランチなの?」
「そうだよ、巽の披露宴で料理から全て、俺がプロデュースすることになったからな、どんなもんか食べてみないとな?」
「◯◯プリンスホテルって、ミシュラン5つ星の称号があるとかさ、テレビで出てなかったっけ?」
「3つ星だろ?高級食材ばかり使って、高いばかりで、味はそうじゃないかもしれねぇだろ?」
「いやいやだってミシュランだよ?なかなかつかないもんでしょ?」
「そうかぁ?俺の店のパスタは一つ星ついてるけどな?」
ニヤリと笑う岳人のどや顔に、驚いて目を剥いた。
「えぇっ?だってバーでそれはないでしょ~」
笑ってたら、軽く頭を叩かれる。
「お前何か勘違いしてるだろ?うちの店は表向きはバーで裏側はイタリアン専門店なんだよ?コース料理もやってるから、基本的に予約制、お前らみたいなうるさいのには、入れてあげないけどな?」
「えぇっ?嘘でしょう?イタリアン専門店って誰が作ってんの?」
あたしの言葉に岳人がはぁ~、溜め息をついた。
睨まれながらも、自分を指差している。
「あのなぁ、こう見えて俺、カミヤダイニング、御曹司、子供の頃から厳しい英才教育受けてんの、大学時代にイタリア留学だってしてんだよ?イタリア料理は俺の専門分野な訳だ、だからミシュラン1つ星くらい軽くついちゃってんの、まぁ、東京では一つ星しか貰ってない店しかないみたいだからな」