あたしの好きな人
第6章 怒りの矛先
◯◯プリンスホテルの、披露宴会場に行き、大学時代の友人のテーブルに座る。
隣のテーブルには岳人とその友人、みんなも交えて会話をする。
「隣のテーブル凄いよね?洋子の元カレと、元セフレだよ~、しかもこっちのテーブルに、セフレの嫁がいるという」
「こっちのテーブルは、巽の元カノいたし~受ける~」
ひそひそ話で盛り上がり、ムスリとして口を開く。
「元カノってあたしのことかしら?めでたい席に下らない昔話はやめてよね?酒が不味くなる」
ワイングラスを持ち上げて、ギロリと睨みつけた。
「ごめんね~、咲良は相変わらずみたいで安心したよ、お互いにまだまだ結婚は程遠いよね?」
「そうねぇ、なかなかそんな人現れなくってさぁ」
誤魔化すように笑っていると、隣のテーブルの岳人とふと目が合った。
出会った時から何か言いたそうなオーラを隠しもせずに、
ギンギンに睨まれてるんですけど。
「おっ?咲良、彼氏いないなら俺とかどうよ?俺、昔からお前のこといいなって思ってたんだよな?」
岳人の隣に座る、章が身を乗りだして、あたしに言った。
章、確か大手企業に就職、家もそこそこの金持ちだけど、性格が昔からとにかくチャラい。
ないわ~。
なんて断ろうか考えてると、岳人があたしの隣に座った。
……えっ?
合コンじゃあるまいし、席替えとかマナー違反でしょう?
そう思っていると、いつの間にか、退屈なスピーチは終わり、皆思い思いに席を立っている。
ビールを注ぎに行く人、料理を取りに行く人と様々だ。
「こいつは面倒な女だから、お前には無理だよ?」
あたしのお皿に乗ってある、生エビを器用に剥いて、口元に寄せられた。
「…んっ、美味しい」
ついつい無意識に食べてしまい、回りの皆が一瞬、静かになった。
女友達は何故だか顔を赤らめる。
「やっぱりお似合いよね~?」
「いい加減付き合っちゃえばいいのに」
「ってか、お前らとっとと結婚してしまえよ」
みんなが口々に言う中、あたしは内心ひやひやしてしまう。
岳人は不機嫌な表情で、ムスリとして生エビを全部剥いて、次々とあたしの口に放り込む。
うん、やっぱり美味しい。
岳人の指を生エビと一緒に舐めてしまい、岳人もその指を自分の口に含んだ。