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あたしの好きな人

第6章 怒りの矛先




一瞬ドキリとしてしまい、回りの皆は呆れたような顔をして、席を立って、料理を取りに行く。

散らばった周囲、なんとなく岳人と隣合わせで二人きりになり、焦ってしまう。

「……元気だったか?」

暫く黙っていた岳人が、口を開く。

あれから約、半年間、ずっと会ってなく、メールも電話もなかったから、

久し振りだからか、岳人がやけに、輝いて見えた。

岳人って、こんなに格好良かったっけ?

あたしの目がおかしくなってるの?

やたらと胸が騒がしく、岳人のちょっとした仕草でさえ、きゅんきゅん胸がときめく。

今まで、どう、岳人と接していたのか分からない。

こんな強烈な存在感、意識しないわけにはいかない。

「うん、…―元気だよ?」

「また、痩せてるけど、ちゃんとメシ食ってんのか?仕事はハードなのか?」

自分ではそんなに痩せたとは思わない、女の子的にしぼれるなら、しぼりたいと思っているのに。

「別に痩せてないと思うけどな?」

「はあっ?全体的にやつれてるだろ?分かってねぇの?」

そう言われてショックを受ける。

体重はほとんど変わらない、趣味のヨガもちゃんと続けてるのに。

「あたし、やつれちゃったの?」

あたしは多分、情けない顔をしてたんだと思う。

悲しくなってそう言うと、ふっと岳人が笑う。

優しい甘い笑顔にドキドキして、今日何回目のきゅんきゅんに、堪えれなくなりそうになる。

呼吸が苦しい…なんて、どうやって呼吸していたのか、分からない。

……こんなのおかしい、岳人なのに。

ほぼずっと一緒に過ごした、空気のような存在だったのに。

哲の笑顔がふと浮かんでしまう。

安心して、癒される存在。

やっぱりあたしは岳人とは……。



「あ、あたし、ちょっと、トイレに行ってくる!」

席を立って、鞄を持って、化粧室に逃げるように行ったんだった。

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