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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

◆c


風呂から上がり、さっき冷やしておいたジュースを冷蔵庫から取り出す。


その傍らにはかずに買ってあげたジュースも冷やされてあって。


結局あのあと二人して完全に寝過ごしてしまい。


三駅程通過してようやく気付いた時はもう遅かった。


"なに寝てんだよばかまさき!"ってかずに言われながら無駄に電車に揺られるハメになったんだ。


そんな訳で、流しでカチャカチャと後片付けをする母ちゃんは当然俺らより先に帰っていて。


「あ、雅紀。和にお風呂言ってきて」


手を動かしながらそう告げられ、首から下げたタオルでペットボトルの汗を拭きながら階段を上った。



俺の部屋と対面のかずの部屋の前で立ち止まる。


「かずー、風呂いいよ」


軽くノックしてそう続けても中からの返事はなくて。


再度強めにノックをして呼び掛けても全く応答がない。


…寝てんのかな。


そろりとドアレバーを下げ中を覗き見ると、こちらに背を向けて机に齧り付くかずが確かにそこに居る。


よく見ると耳からイヤホンの線が伸びていて。


なんだ聞こえなかっただけかと思って中に入り、後ろから近付いて声を掛けようとしてハッとした。


机に広がっていたのは水着の女の子が載った雑誌。


誘うようにセクシーなポーズのそのページを、頬杖をついてジッと見ているかずの背中。


かずのやつ、こんなの見るようになったのか!


まぁそっか、こいつももう高校生だもんなぁ。


そういえば俺が中二の時、持ってたエロ本をかずに見つかって母ちゃんにバラされたっけ。


その頃は同じ部屋だったからよく二人でワイワイ言いながらこんな雑誌も見てたけど。


ふーん…
兄ちゃんに隠れてこっそりこんなの読んでんだ。


そんなかずの姿にちょっとしたイタズラ心が湧いてきて。


後ろから息を潜めて、その真っ白な頰にキンキンのペットボトルをぴとっとくっつけてやったら。


「ひっ…!」


案の定ビクッと肩を揺らして振り返り、弾みで右耳のイヤホンが外れた。


「くふふっ、なにいいモン読んでんの」

「っ、なっ…なに勝手に入ってんだよ!」

「勝手じゃねぇよ、ちゃんと呼んだし」

「しっ、知るかよばかまさきっ!」


顔を真っ赤にして睨みつけるかずからまたばか呼ばわりされ、今日何度目かのそれにちょっとムッときた。

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